俺だけの幼馴染がクラスの根暗陰キャに寝取られて・・・(大庭亜衣)

えっちな文章

─ 幼馴染のあの娘は俺だけのモノだったのに ─

「ちゃんと勉強は進んでるか、亜衣」 「うん。君に言われた所までちゃんとやったよ」 二階の窓越しに僕と幼馴染の大庭亜衣(おおば あい)は言葉を交わす。 亜衣とは家が隣同士だった。 子供の頃からの付き合いで、どこか鈍くてトロいコイツを引っ張っていくのが俺の役目だ。 周囲の人間からは兄と妹のようだと言われている。 今現在、俺たちは高校二年生。 俺は大学に進学すると決めているので亜衣もそれに付き合っているのだ。 ただ・・・亜衣はあまり頭が良くない。 高校受験の時も今通ってる進学校に入学するため、俺が付きっ切りで勉強を教えたのだ。 今の大学受験も似たようなものだった。 「・・・くしゅん」 亜衣がくしゃみをした。 「あ、ごめんな。寒いよな。」 「ううん、大丈夫だよ。」 鼻をぐずらせながら亜衣は笑って返事をする。 風呂上がりのその姿はとても色っぽい。 学校でも評判の美人で愛想も良く、人当たりも良い。 性格は極めて温厚・・・そして、その豊満な乳房。 いわゆる爆乳というやつだった。 サイズはさすがに知らないが、100㎝越えのLカップは確実だろうとクラスの男子の間では囁かれている。 当然ながら男子からモテまくってる。 告白されない月がないくらいに告白されて困ってると愚痴をこぼしていた。 コイツを好きになった男どもには悪いが亜衣は俺にぞっこんなのだ。 何せ子供の頃に結婚する約束をしている。 来年の四月・・・俺の十八歳の誕生日に正式に告白して、結婚を前提としたお付き合いを始めると二人の間で取り決めているのだ。 「えへへ・・・」 思いっきりくしゃみをしたのが恥ずかしかったのだろう。 亜衣が照れ臭そうに笑っていた。 「もう十二月の中旬だしな。風邪ひくとマズイ。今日はもう寝よう」 「うん、そうだね。」 俺と亜衣は窓から少し乗り出していた体を引っ込める。 「それじゃ、亜衣。おやすみ。」 「うん、おやすみなさい。」 俺たちはそう言って窓とカーテンを閉めた。 次の日の朝。いつもの時間通りに家を出ると今日は亜衣が先に待っていた。 「おはよう」 亜衣がにこやかに笑って挨拶をしてくる。 「ああ、おはよう。亜衣」 俺も挨拶をし返す。 小学生の頃から俺たちは一緒に登下校をしている。 こうやって学校でも一、ニを争う美少女と毎日肩を並べて歩けるというのは幼馴染の特権だった。 俺たちの通ってる高校は家から比較的に近くて、歩いてニ十分程度の場所にあった。 一時間近く電車に揺られて通ってる生徒もいる中で俺たちはかなり通学に適した場所に住んでいた。 ちょっとした世間話と天気の話などをしている内に、あっという間に学校に着いた。 校門をくぐって、中庭を通り、生徒用の玄関口に入る。 そこで上履きに履き替えて二階の俺たちの教室に向かうのだが・・・亜衣が中庭で立ち止まって花の咲いている鉢植えに目をやっていた。 「どうしたんだ?亜衣」 「・・・うん、凄いなぁって思って」 俺は鉢植えに目をやる。 「何が凄いんだ?」 別に普通の鉢植えに花が咲いてるだけじゃないか。 「中庭の花壇って春も夏も秋も冬も一年中いつも花が咲いてるんだよ。季節に合わせて咲いてる花も違うの。たぶん鉢植えを季節ごとに移動させてるんだと思う。」 「・・・ふーん」 俺は興味なさげに適当に返事をする。 だから何だってんだろう? 花なんて種まいて適当に水やってりゃ勝手に咲くだろう。 園芸部がやってる事なんだろうけど大したものだとは思えない。 「ほら見て。このアリッサム。こんなに形良くたくさん花を咲かせるなんて・・・株の形が崩れないように丁寧に切り戻しをしっかりしてるんだよ。」 「・・・あ、そうなんだ」 専門的な事を言われてもよく分からないし困るんだが。 「綺麗だなぁ・・・誰が育ててるんだろ。少し分けてもらえないかな・・・しおりの押し花に使いたいな・・・」 俺はその言葉に反応する。 「まだ手製で押し花のしおりなんて作ってるのか?」 亜衣がビクっと肩を震わせる。 「あ、うん・・・ごめんね。」 「そんな子供っぽい事はもう止めろって言ったじゃないか」 「う・・・うん。」 亜衣が申し訳なさそうに俯いて頷く。 「俺がこの間の誕生日に買ってきてやったしおりはどうしたんだ?」 あまりにも幼稚でみすぼらしいしおりを使っていたので、お揃いの二組のしおりの片方を送ったのだ。 一つは俺が所持してもう一つは亜衣が持っている。 アンティーク風のデザインで本革を使用した耐久性の高い、結構な値の張る高級品。 「え・・・あ、ごめん・・・アレね・・・使うのがもったいなくて、汚したくなくて・・・タンスに保管してるの」 「何だよ、使わないと意味ないじゃないか」 「う、うん・・・ご、ごめん。」 俺もほとんど本なんて読まないから机の奥にしまってそのままなんだけど。 「・・・まぁ、いいや。お前ももういい年齢なんだからさ、そんな幼稚な趣味なんて早く止めろよ」 「う・・・うん。」 「ほら、早く行くぞ。いつまでもこんな所にいたら寒いだろ」 俺は項垂れている亜衣を引っ張って教室へと向かった。 でも亜衣は・・・俺に引っ張られながら、中庭の鉢植えに目をやっていたのだった。 放課後になった。 何の変哲もない一日であっという間に過ぎていった。 「亜衣、一緒に帰ろうぜ。」 俺はいつものように亜衣と一緒に下校しようと声を掛ける。 「あ・・・ごめんね、今日は・・その、用事があって・・・」 亜衣は珍しく何か用事があると言って一緒の下校を断ってきた。 「あ、そうなのか」 「う、うん・・・ちょっと時間が掛かるかもしれないから先に帰ってて。」 「そうか・・・分かったよ。それじゃ先に帰るな」 「うん、じゃあね。」 亜衣は手を振って教室を出る俺を見送った。 (何の用事なんだろうな?) 俺は疑問に思いながら廊下の曲がり角を曲がった。 すると出合い頭に男子生徒とぶつかってしまった。 「おっと・・・悪い。」 「・・・・・・」 相手の男は悪びれもせずそのまま教室へと向かっていく。 「・・・ったく、感じ悪いよな、アイツ」 そいつは一緒のクラスの男子で、名を児島 充留(こじま みつる)と言った。 クラスでも浮いてる根暗のド陰キャ。 人と話してる所なんてほとんど見た事がない。 この学校は曲がりなりにも進学校で大学への進学を希望する者が多い。 なので内申に響いてしまうような不祥事・・・要するにイジメの類は全くと言って良いほどない。 でも、もしもこの学校がちょっとでもガラの悪い学校だったなら、児島は真っ先にイジメの対象になってただろう。 長い前髪に隠れて相貌はよく見えないが、とにかく雰囲気が暗くて愛想がない。 中肉中背で髪はボサボサ。 いつも一人で何をしてるのかも知らないし、声がどんなのかも分からない。 はっきり言って不気味だ。 「・・・ま、いいや。早く帰ろう」 俺はそう呟いて帰路へとついた。 次の日の朝。 俺は登校するためにいつもの時間に外に出る。 どうやら今日は俺の方が早かったらしい。 いつも待っている電柱の前に亜衣はまだいなかった。 しばらく待つ。 だけど亜衣はいつまで経っても家から出てこない。 「何だ?寝坊でもしてるのか?」 俺は隣の家のチャイムを鳴らす。 すると玄関が開いて、亜衣の母親が顔を出した。 「おばさん、おはようございます。」 「あら、おはよう。」 「亜衣は?」 俺がそう尋ねるとおばさんは怪訝な顔つきになった。 「え・・?もうとっくに出たけど・・・・今日は一緒に登校しないの?」 俺はその言葉を聞いて頭に血が上る。 「す、すいません。あの・・・いってきます」 「・・えぇ・・・いってらっしゃい」 困惑しているおばさんを尻目に俺は学校へと向かう。 携帯で何度かメッセージを送るけれど返事はなかった。 教室に着くと亜衣はすでに登校していて、クラスの女子と談笑していた。 「おい、亜衣。」 「あ、おはよう・・・」 亜衣は気まずそうな顔で挨拶をする。 「何で先に学校に行ってるんだよ。ずっと家の前で待ってたんだぞ」 「ご、ごめんね・・でも、約束してるわけじゃなかったから・・・・」 「何度も携帯にメッセージ送ったんだぞ」 俺がそう言うと亜衣は慌てて携帯を見た。 「・・・ご、ごめん。マナーモードにしてて、気づかなかったの。」 「今日の放課後は一緒に帰れるんだよな?」 俺がそう言うと亜衣は申し訳なさそうに口を開いた。 「あ、あのね・・・えっと、実はちょっと用事があって・・・・これからは一緒に登校したり下校したり・・・できないと思うの」 俺はそれを聞いて唖然とする。 いままでずっと一緒に登下校してきたのに、いきなり出来ないと言い出した。 亜衣と・・・学校のマドンナと肩を並べて歩くというのはちょっとした優越感に浸れるイベントだったのに。 「な・・・何でだよッ・・・用事って何だよッ・・」 「・・ぁ、ぅ・・・・あの、その・・・ごめん。言えないの。」 「何で言えないんだ?何か後ろ暗い事でもしてるのか?」 俺がさらに問い詰めようとすると、となりの女子が割って入ってきた。 「ハイハイ、そこまでー。アンタね、亜衣だって年頃の女の子なんだよ?男子に言えないことの一つや二つあるに決まってるでしょー?」 「和香ちゃん・・・別に私、人に言えないようなことはしてなくって・・・その・・・・」 亜衣が慌ててそう言うが、 「大丈夫、私にまかせなって。・・・アンタね、大体、いっつも亜衣に引っ付きすぎなのよ。私たちが亜衣を放課後に遊びに誘ってもアンタと一緒に帰らないといけないからっていつも断ってるんだよ」 それは初耳だった。 「本当は亜衣だって私らとカラオケ行ったり買い物したりしたいのにさ。」 俺は亜衣を見る。 すっ・・・と、亜衣は俺から目を逸らした。 「どうしても一緒に遊ぶときは、わざわざアンタと一緒に帰って、それからまた出かけて私達と合流して遊びに行くんだよ?」 「・・・和香ちゃん、・・もういいから・・・・」 唖然としている俺を庇うように亜衣が言う。 「・・・そうだったのか、亜衣」 「・・ぁ、ぅ・・・・・」 亜衣が困ったように俯く。 「亜衣は内気な性格だってアンタも分かってるでしょ?ちゃんとそこの所をさ、考えてやりなよ」 「・・・・すまなかったな・・亜衣。俺、全然気が付かなくて・・・・」 「う・・ううん、いいんだよ。でも・・・その、これからは・・・一緒に登下校するのは・・・・ちょっと出来ないかも・・・・・」 「・・・そうか・・・・・わかったよ」 「うん、ごめんね。」 そこで予鈴のチャイムがなって、俺たちはそれぞれの席に離れて行った。 その日の放課後も俺たちは一緒には帰らなかった。 次の日もその次の日も・・・一緒に帰るどころか、話す事もほとんど無くなった。 それからおよそ一週間後・・・俺はもう我慢できなくて放課後に亜衣が何をしてるのか探りを入れる事にした。 この一週間の間に俺は何度も亜衣の携帯にメッセージを送った。 『今、何してるんだ?』 『ちゃんと俺が設定した目標の所まで参考書を解いたか?』 『お前の用事が空いた時は一緒に帰ろう』 『絶対、一緒の大学に行こうな』 だけど・・・帰ってくる返事は『うん』とか『そうだね』などの生返事ばかりで、電話を掛けても体調が悪いからと言ってすぐに切られた。 ホームルームが終わって解散になった後、俺は亜衣の後をつけた。 (どこに行くんだ・・・?) 亜衣は人気の無い旧校舎の方へと向かっていく。 人気が無いから結構な距離を取らないと気づかれてしまう。 すると亜衣が旧校舎に入っていった。 俺も入るが・・・・ 「くそっ・・・見失った。どこに行ったんだ・・?」 俺は三階まであるその旧校舎をしばらく歩き回る。 すると一階の端の教室から、かすかに声が聞こえた。 園芸部と書かれたプラカードが掛けられている教室に入ると、よりはっきりその声が聞こえるようになった。 その声はその教室のさらに奥にある分室から聞こえてきていた。 分室のドアがわずかに開いていて、そこから声が漏れているようだった。 『・・ぁ、ん、、ぁっ・・・充留、く・・・ん・・・あ、ぁっぁぁぁ・・・・』 『・・・すごく、キモチ良さそうだね・・・』 『だって・・・ン、ぁっぁ・・・み、つる、、君が・・・激しく、突く、、、からぁッ・・・アっぁぁ、、ッ・・・』 なんて奴らだ。 学校でセックスしている。 早く亜衣を探し出してこんなところから連れ出さないと・・・亜衣は・・亜衣はどこにいるんだ・・・
『・・亜衣・・・膣内、、すごく・・・暖かい・・・・』 『・・・ふふ・・充留君がいっぱい出したり入れたりするから・・・・もうすっかりオマンコが広がっちゃって・・・簡単に入るようになったんだよ?』 『三日前まで処女だったのに・・・すっかり僕とのセックスを覚えちゃって・・・・亜衣はエッチな女の子だ』 『・・ぁん・・・・そ、んなこと、、、言っちゃ、らめぇ・・・・ぁっぁ、っぁアぁ・・・・』 ・・・・俺は・・・ベルトを緩めてパンツの中に手を入れる。 ギチギチに勃起したイチモツを握って擦る。 『亜衣・・・亜衣ッ・・・・おっぱい、柔らかい・・・・』 『・・・ん、ぁ・・・充留、くんの、、、オチンポ・・・また、おっきくなって・・・んぅッ、ぁっぁ・・・』 コスコスとその声を聞きながらオナニーする。 彼らの行為が見たくて扉の隙間から中を覗くが・・・二人は奥の方でヤッてるらしく姿が全く見えない。 ただただ・・・艶めかしい性行為中の・・・愛し合う二人の声だけが聞こえる。 『・・・出すよッ・・亜衣ッ・・・・中に・・・ッ・・・』 『・・うん、・・・ぁっぁあ、、キて・・・膣内に・・・・充留くん、の・・・赤ちゃん種・・・私の子宮に・・・いっぱい注いでぇぇぇッッ・・・!!!』
俺はその喘ぎ声を聞いて、亜衣の裸を想像しながらオナニーをした。 亜衣は乳房が大きい。でも乳輪は俺の好み通りに小さいはずだ。 子供の頃に一緒に風呂に入った時は小さく蕾のような乳首だったのだから、どんなに乳房が成長しても可愛らしい乳首に違いない。 俺はデカイ乳輪が嫌いだ。 AVでよく見るけれど品が無い。亜衣の乳輪は上品な佇まいをしているに決まっている。 その想像上の亜衣の乳房と乳首を想像しながら必死にオナニーをする。 『出るッ・・・くっ・・・ぅあぁぁあぁ・・ッ・・!!』 『ッ!!、、ァぁぁぁぁっぁぁァあッぁぁぁぁぁぁっぁッぁッ・・・・』 「・・うッ・・・・」 セックスをしている二人が達するのと同時に俺も射精する。 ビュルビュル、とパンツの中に白濁液が放たれる。 『・・・ハァハァ・・亜衣・・・好きだ・・・・・』 『・・うん、私も・・・・充留君が、大好き・・・・ん、チュ・・・♡』 「ハァハァ・・・」 俺は一人で息を荒く吐く。 行為をしていた二人は愛を囁き合ってキスをしている。 チュパチュパと舌を激しく絡まらせ合う音が聞こえてくる。 俺にはそんな相手はいないのに。 『・・ふふ・・・まだ出ちゃうんだ・・・私の膣内でビュルビュルって射精しながら充留君のオチンポが可愛く跳ねてるよ?』 『うん・・・亜衣を絶対に妊娠させたいから・・・いっぱい出るんだ』 どうやらセックスしていた男は女の膣内に射精したようだった。 ならば女の子宮に注ぎ込まれた男の精子は、女の卵子を目指して活き活きと泳ぐことだろう。 俺の放った精子はパンツの中で行く当てもなくドロドロと彷徨い、やがて乾いて死ぬというのに。 俺はズボンのベルトを締めなおして、そそくさとその場を後にする。 パンツの中がグジャグジャで気持ちが悪い。 早く帰って着替えないと・・・。 俺はその日、亜衣を見つけられなかった。 ・・・・・・・・・・見つけられなかったんだ。 亜衣はどこにもいなかったんだ。 冬休みになった。 亜衣とは話すどころか、もう携帯での連絡もほとんどしなくなっていた。 でも毎年正月は俺たちは一緒に初詣に行っていた。 年頃になるにつれて美しくなっていく亜衣を年の初めに見られるイベントだった。 俺のために綺麗な振袖を着てくれる。
なので、今年も行こうと誘ったのだけれど、 「あ・・・ごめんね、・・・今年は、その・・・違う人・・・・友達と行くから」 そう言って断られた。 それから正月が明けて何日かが経った。 俺は自宅で風呂に入っていた。 「亜衣・・・・」 一人湯船に浸かって想い人の名前を呼ぶ。 でも当然ながら返事はない。 湯の揺らめきを見ながら、ぼうっとしていると亜衣の家から声が聞こえてきた。 亜衣の家の浴室と俺の家の浴室は隣り合っていて、防音もあまり良くないから声がたまに聞こえるのである。 『・・・ぁ、だめ、だよッ・・・充留、君・・・・声、となりに聞こえちゃ・・・・んぁ、っぁぁあッ・・・』 ・・・どうやら亜衣のお姉さんが帰省しているみたいだ。 恋人の彼氏さんと風呂場でイチャついているらしい。 『・・でも、亜衣・・・・アソコ、すごく濡れてるよ?』 『そ、それはぁ・・・だって・・みつ、る・・・君がぁ・・・おっぱい・・弄る、からぁ・・・・っ、ぅんッ・・・ぁ・・・』 俺は湯船から出てもっと声の聞こえる位置に移動する。 隣から聞こえる声に耳を澄ませながら勃起したチンコを握り締めて擦る。 『ほら、後ろからシてあげる。お尻、こっちに向けて。』 『・・・はい♡』 どうやら後背位でヤるらしい。 『・・・ん、ぁっぁぁぁ・・・・』 『・・すごい、締まりがいつもより良いよ。亜衣はご近所様に聞かれてると思うと興奮するんだね?』 『や・・ちが、・・っぁぁぁぁ、まって・・・まだ、突いちゃ、・・ぁっぁァぁぁあッ・・・・』
俺は亜衣とのセックスを想像する。 バックから腰をがっしり掴んで思いっきり打ち付ける。 「亜衣・・・亜衣ッ・・・・」 『・・・やぁッ・・・ぁっぁ、・・・そんなに強く・・パンパン、しない、、でぇッ・・・充留、く・・・んぁぁっぁ・・・』 『・・ほら、亜衣・・・もっと可愛い声、出して・・・・目の前の鏡も、見てごらん・・・・・すごくエッチな顔の亜衣が映ってるよ』 『・・・らめぇッ・・・わた、し・・・頭、、バカに、なっちゃ、う・・・よぉ・・・ッ・・・・・』 俺はもう射精感が高まってしまって射精してしまいそうだった。 隣の二人はまだまだ愛し合えてるというのに、俺の方はもう限界だった。 きっと二人は何度もセックスして長い時間を愛し合えるように・・・愉しめる様にヤリ方を工夫して実践してるのだ。 ・・・もう彼らは完全な恋人同士だった。 「・・うッ・・・・」 俺はとうとう耐え切れずに、みっともなくビュビュッ、と射精してしまう。 『・・・ほら、まだまだ突き続けるよ、今日は思う存分にイカせまくってあげるからね』 『・・うん、いっぱい・・・ぁっぁ、・・・いっぱい、愛して、ください・・・・んぁっぁ、っぁっアぁぁっッ・・・・』 俺は荒く息を吐きながら射精して床にブチ撒けられた自身の精液を呆然と見る。 女の子宮に流し込まれるであろう隣でヤッてる男の精液と違って、俺の精液は排水溝に流れておしまい。 ひたすらに虚無感が俺を襲った。 隣からは彼女の・・・ついこの間、旧校舎で聞いた女の喘ぎ声と全く同じ喘ぎ声が聞こえてくる。 さらに激しくヒートアップしていく彼らの性行為の音色を聞きながら、俺は惨めに風呂場を後にするのだった。 その日の晩・・・俺は自身の部屋の窓から隣の家の部屋を見ていた。 そこは亜衣の部屋だ。 今日もそこに亜衣はいる。 点いていた亜衣の部屋の電気が消えた。 ・・・・・そこでは何が行われているのか・・・。 幼馴染の亜衣の事は俺が何でも知ってる。 知ってなきゃいけないんだ。 俺は窓を開けて亜衣の部屋の窓をノックする。 返事がない。 俺は何度も何度もノックする。 もはやノックというより、癇癪混じりに叩いている様相だった。 するとカーテンが開かれて、窓が乱暴に開かれた。 「・・・ハァハァ・・・・・なに・・・?」
パジャマのボタンを掛け間違えてる亜衣が、やや胸元を肌けさせてこちらに問いかけてきた。 息を荒くして頬を紅潮させたその姿は色情に塗れた姿だった。 自身の痴態を認識したのか慌ててシャツを引っ張って肌を隠す。 まるでその美しい肢体を見る資格は俺には無いと言わんばかりに手で自身の体を隠した。 よく見ると首筋や鎖骨の辺りに赤い斑点がついている。 キスマーク・・・いや、違うッ!! 虫に・・・そうだ、虫に刺された跡の斑点なんだ。 そうに決まってるッ!!! 「・・・何の、用事・・・・なの・・?」 黙ってる俺に若干イラついてる様子で再度聞いてくる。 「あ、いや・・・・特に用事は無いんだけど、久しぶりに亜衣と話が・・・」 「ごめん、体調が悪いから」 早く終わらせたくて堪らないといった感じで、俺が言い終わる前に話を終わらせようとする。 俺は何とか話を続けようと話題を探すけど、とっさに思いつかなくて・・・ 「・・・もう、いい?・・・寒いし、早く寝たいの」 「・・ぁ・・・あぁ、ごめんな・・・寒いのに。体調も悪いなら、なおさらゴメンな」 「・・・うん、それじゃ。」 亜衣はそう言うとさっさと窓を閉めた。 鍵をガチャンと、激しく・・・まるで俺を完全に拒絶するかのように閉めて、カーテンに手を掛ける。 俺はカーテンを閉める寸前の亜衣の顔を見た。 横を向いて、まるでそこに誰かいるように微笑んでいる。 その顔は俺に見せていた不快そうな顔とは打って変わって、愛おしそうな・・・それでいて欲情したオンナの顔をしていた。 勢いよくカーテンが閉められて・・・もう中で何が起こっているのか分からなくなった。 亜衣の部屋は風呂場と違って防音がしっかりしている。 全く音が聞こえない。 だから俺は・・・その部屋で行われている事を頭の中で想像するしかなかった。 俺も窓とカーテンを閉めて、亜衣の部屋で・・・すぐ隣の部屋で二人がヤッているであろう事を想像する。 ベッドの上でギチギチに勃起したチンコをコスコスと擦りながら。 冬休みが明けて新学期になった。 俺と亜衣が一緒に登下校する事はもう全く無くなった・・・というよりも会話すること自体が無くなった。 携帯のメッセージもブロックされて、電話も着信拒否されてしまった。 亜衣の部屋の窓をノックしても完全に無視される。 だけど二月の終わりに差し掛かった頃、亜衣から一緒に下校しようと誘われた。 「・・あの、・・・ちょっと話があるから・・・その、・・・一緒に帰らない?」 俺は嬉しくなって、もちろんその誘いを受けた。 「・・・ほんと久しぶりに一緒に帰ってるよな」 「・・・・うん。そうだね。」 隣で歩く亜衣は・・・どこか大人びて見えた。 俺は・・・童貞だ。 セックスはしたことがない。 ・・・・・亜衣は? 今、横に並んで歩いている亜衣は・・・処女、なのだろうか? 亜衣は・・・俺が手を引いて引っ張っていく存在のはずだ。 そうでないといけない。 だから、俺よりも先に・・・俺以外の男と経験するなんて、あって良いはずがないんだ。 俺を置き去りにして先に進んで・・・どこかに行ってしまうなんて・・・・あってはならないんだ。 「・・・・ちゃんと勉強はしてるか?大学受験までもうあと一年だぞ。」 「・・・・・」 「俺たち、一緒の大学に行くんだろ?」 「・・・・・・・・・」 亜衣が目を逸らして手で髪先を弄り始めた。 ・・・どこか嫌そうな・・・・早くこの場を切り上げたいという雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。 「・・あ、あのね・・・私ね・・・・・大学には、行かないと・・・思うの」 「・・・・・・なんでだ?」 俺は問い詰める。 だって、約束したじゃないか。 ほんの二か月くらい前まで俺たちはその目標に向かって一緒に頑張っていたじゃないか。 頭の悪いお前のために俺が勉強のスケジュールを立てて、お前がその通りにこなして、少しずつ目標の偏差値に近づいて・・・それを二人で喜んでいたじゃないかッ!! 「なんでだよッ!?」 俺は語気を強めて亜衣に問いただす。 「・・・ッ・・ご、ごめんなさ・・・・でも、私・・・わ、たし・・・・」 そこまで言って、亜衣は左手首にしてあるブレスレットを握った。 そのブレスレットは俺の見た事のないものだった。 やがて意を決したように亜衣が顔を上げて決意を口にする。 「私・・・高校を卒業したら、お花屋さん・・・フラワーショップをやろうと思ってるの」 ・・・・何を言ってるんだ? ・・・花屋?フラワーショップ? 「今ね、その準備をしていて・・・・だから、もう・・・君と大学受験のための勉強は・・・しません。」 はっきりと拒絶の言葉を亜衣は口にする。 俺は頭に血が上る。 亜衣が初めて俺に反抗した。 今まで俺の言う事を何でも聞いて、素直に従って・・・それで俺たちの関係は上手く行っていたのに。 ずっと・・・一生その関係が続いて俺たちは一緒に幸せになるはずだったのにッ!! 「・・・そんなのは駄目だ。」 「・・・・・なんで?」 俺は語気をさらに強めて言う。 「花屋なんてやっても上手く行くはずない。」 「・・・・・・」 「大体、花なんて誰が買うんだよ。祝い事や行事でほんの少しの需要がある程度だろう?」 「そ、そんなこと・・・・」 亜衣が何かを反論しようとするけど、俺は畳みかける。 「そんな不安定でいつ破綻するかもしれないような商売に首を突っ込むな。」 「・・・・」 「お前は俺と一緒に大学に行くんだ。俺たちが目指している大学は二流三流の学校じゃない。卒業すれば一流の大企業への就職が約束されてるような国立大学だ」 亜衣は押し黙って俯いている。 「安定した将来が約束されてるようなもんだ。花屋って・・・お前、そんな有っても無くてもどうでも良いような仕事に就いてどうするんだよ」 この瞬間に世界中の花屋が無くなったとしても、特に誰も困りはしないだろう。 「花屋なんてくだらない商売だ。存在してる意味が無い。そんなものをわざわざやりたがるヤツってのは頭がおかしい人間だと思って良い。」 亜衣はさらに俯いて・・・俺はその表情が見えなかった。 「お前は俺の言ってる通りにしてれば良いんだ。それで何もかも全部上手く行くんだ。だからまた俺と一緒に勉強して・・・」 「・・・・・・・しないでよ」 「・・・え?」 亜衣が何かを口にしたがよく聞き取れなかった。 なのでもう一度聞こうとしたその瞬間、 「馬鹿にしないでよッッ!!!!」 ・・・今まで聞いたことなかった、亜衣の怒鳴り声が辺りに響いた。 俺はあっけに取られる。 「・・・・あなたに何が分かるの?・・・花のことなんて何も知らないくせにッ!!」 亜衣は目の端に涙を浮かべて・・・強く俺を睨んでいた。 怒りと憎悪と嫌悪の目。 俺は初めて幼馴染の女の子から侮蔑混じりの視線を向けられていた。 「・・・君の言う通りだよ。新しいフラワーショップなんて上手く行かないことが大半だよ。有名店が需要を独占してるようなものだから、新規の店が続く事なんてほとんどない。でもッ・・・」 その瞳には・・・強い意志が宿っている。 こんな亜衣を俺は見た事がなかった。 「だからって・・・・やってみようって人の事を、その仕事に就いてる人たちの事をそんな風に見下してッ・・・・あなたは何様なのよッッ!!!」 俺はその迫力に気圧されて、後ずさる。 「亜衣・・・お、落ち着け・・・・」 「・・・・ッ・・・」 そこで亜衣はようやく我に返ったみたいで、俺から視線を外して再び俯いた。 しばらく押し黙っていたが、やがて何も言わずに歩きだした。 俺を置き去りにして。 「・・・ま、待てよ、亜衣・・・・待ってくれ・・・」 俺は慌てて後を追う。 だが亜衣はもう俺の事など見向きもしなかった。 「お、俺が悪かった。・・・確かに特定の職業を指さしてあんな風にこき下ろす様な事は言うべきじゃなかった。・・・ごめん。」 「・・・・・・」 亜衣は返事をしない。 「あ、亜衣・・・・」 通学途中にある交差点に来た。 「私・・・こっちだから。」 「・・・え?」 亜衣は自宅のある方向とは違う道へと歩いて行こうとする。 俺が歩く道とは別の道を。 「・・・そっちは別方向だろ。どこに行く気なんだよ」 一緒に帰ろう・・・俺たちの居た場所に。 そこが穏やかで幸せな場所だったじゃないか。 なのに・・・お前は一体、どこに・・・・・・。 「・・・・君には関係ないと思う。」 その冷たい一言に・・・完全な拒絶の言葉に俺は血の気が引く。 足がガクガクと震えて・・・目の前の・・・・静かに激怒する一人の女性に恐怖する。 俺を見るその瞳はもはや侮蔑のものでも嫌悪のものでもなく・・・無関心のそれだった。 亜衣の中で俺の価値が、”どうでもいいヒト”になったのが分かった。 手からすり抜けていく。 大事なものが。 大切にしていたものが、消えていく。 「さようなら。」 別れの言葉を告げて亜衣は歩き出した。 俺の知らない・・・どこかに向かって。 四月になった。 高校三年生になってクラス替えがあった。 俺と亜衣は進学を希望して、尚且つ成績上位者だったから一緒の特別進学クラスになるはずだった。 でも・・・亜衣は進学をしない旨を学校にすでに伝えていて、それで亜衣は就職を希望するクラスに編入された。 小学校の頃からずっとクラスが同じでいつも一緒だったのに・・・高校三年生のクラス分けで離ればなれになってしまった。 進学クラスの教室と就職クラスの教室は別の棟にあって、かなりの距離がある。 だから俺と亜衣は学校で会うことも全く無くなった。 登下校も亜衣は自宅とは別の場所から通っているらしく、通学中に姿を見る事も無い。 そんな中で一つの噂話が耳に入った。 あの大庭亜衣に彼氏が出来たという噂だ。 ・・・そんなわけない。 亜衣は俺と結婚する約束をしている。 子供の頃、亜衣が無邪気に笑って俺と絶対に結婚すると言って、俺はそれにこう返事をしたんだ。 “大人になったら俺が亜衣ちゃんをお嫁さんにするよ。その時に告白するから結婚しよう”って・・・。 だからその約束を反故にして亜衣が俺以外の男と付き合うなんてあるはずがないんだ。 今日は俺の十八歳の誕生日だ。 成人する日だ。 俺はこの日に亜衣に告白して正式に付き合うと決めていた。 結婚は・・・まだ早いかもしれないけれど婚約ならできるはずだ。 なので俺は昼休みに亜衣のクラスに足を運んで、放課後に校舎裏に来るように伝えようと思った。 でも亜衣はその時クラスに居なくて・・・仕方がないので亜衣のクラスの女子に伝言を頼んだ。 二年生の終わりの時期にちょっと喧嘩してしまったけれど、そんな事で俺と亜衣の絆が壊れるはずない。 亜衣は俺の告白を喜んでくれて、それで俺たちは恋人同士になって、また一緒に勉強して大学に合格して、キャンパスライフを楽しむんだ。 それで大学を卒業するのと同時に結婚して、俺たちはずっと幸せに暮らすんだ。 放課後の校舎裏で、俺はその希望を胸に亜衣を待った。 亜衣が校舎の隅から顔を出してこちらに歩いて来た。 相変らず美しく綺麗な容貌だった。 大きな乳房が歩くたびに揺れる。 どことなく色気を帯びて、腰つきの女性っぽさが増しているように思う。 まるで色気と女性らしさが増すようなナニかを毎日毎晩ヤッているかのように。 亜衣が俺の目の前で立ち止まる。 「・・・・何か、用・・・ですか?」 目を逸らしながら敬語で俺に聞いてきた。 「亜衣・・・俺はずっとお前が好きだった。俺と付き合ってほしい。」 俺がそう言うと亜衣はポカンと口を開けて俺を見た。 「あ、あの・・・・なんで、どうして・・・?」 亜衣が理由を聞いてくる。 「だって俺たち約束してたじゃないか。十八歳になったら俺から告白して、それで結婚するって」 「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 心底、何を言っているのか分からないと言った表情で亜衣は間の抜けた声を出した。 「まさか・・・お前、忘れたのか・・・?」 そんな馬鹿な。俺は一日だってその約束を忘れた事なんて無かったのに。 「ご、ごめんなさい・・・覚えて、ないです。」 亜衣が俯いて、怯える様に返事をする。 「私が・・・その約束を今でも覚えていて・・・・それで、私と・・・付き合えるって・・・・・思ってたの?・・・今まで・・・・ずっと・・・・・?」 俺は頷く。 だってそういう話だったじゃないか。 俺が頷くのを見て亜衣は・・・一歩後ずさった。 俺を見るその目は・・・・・嫌悪と恐怖と侮蔑に染まっていた。 「あの、・・・本当に、ごめんなさい。無理です。わ、私・・・いま、好きな人がいて・・・・その人とお付き合いしてるん・・・です。」 「・・・嘘だ。」 「う、嘘じゃありません。本当ですッ」 亜衣が怯えながら俺に答える。 「だ、誰だよ・・・誰と付き合ってるんだよッ!!」 「・・・クラスメイトの児島充留くん・・・です。」 ・・・コジマミツル・・・・・? 名前を聞いても顔を浮かべる事がとっさに出来なかったが・・・ ああ・・・そうだ。 そういえばそんな奴がいた。 クラスでも浮いていた・・・いつも不愛想な根暗のド隠キャ野郎。 「な・・・なんで、あんな奴と・・・・・」 あんなド陰キャが、学校のマドンナのお前と釣り合うはずがない。 お前と釣り合うのは幼馴染の俺だけなんだッ!! 「・・・人の彼氏の事を・・・・あんな奴なんて・・・言わないで・・・」 静かな口調であったが、怒りが籠っているのが分かった。 あの時の・・・花屋を侮辱した時の亜衣の姿が浮かんで俺は足を竦ませる。 「・・・わ、悪かった。」 俺は慌てて謝る。 「・・・・い、いつから・・・いつからそんな関係になったんだ・・」 「・・・去年の十二月の中旬くらいから・・・充留君とお付き合いを始めました。」 血の気が引く音が聞こえる。 そんな・・・そんな・・・・・・ 「・・・・・・これから言う事は、まだ内緒にして貰えますか?」 呆然とする俺に亜衣は言葉を続ける。 「私・・・妊娠してるんです。・・・充留君との子供です。」 亜衣がふと優しい表情になって自身の下腹部を手でなぞった。 ・・・ニンシン、シテるんです・・・・? その言葉の意味が分からなかった。 分かりたくなかった。 「・・・出産予定日は今年の十二月上旬です。・・・学校と私の両親、充留君のお義父さんとお義母さんは知っています。でも、まだクラスのみんなには内緒なんです。」 目の前の光景が歪む。 今、自分がどこに立っているのか分からない。 「もう少し経って・・・安定期に入ったらみんなにも報告するつもりです。それと充留君とは十八歳になったら籍を入れることになってます。彼は私の婚約者です。」 なんで・・・なんで・・・・結婚するのは・・・お前と子供を作るのは俺じゃないか・・・・俺のはずじゃないか・・・・ 「亜衣・・・お、俺と・・・・」 「・・・ッ!!・・・・だからッ・・・・あなたなんかとお付き合いなんて出来ませんッ!!!」 何かを言おうとした俺の言葉を遮って、心の底から怯えるように拒絶の返事をして・・・亜衣は踵を返し、その場から足早に去って行った。 まるでキモチ悪いものから一刻でも早く遠ざかろうとするように。 これでおしまい。 これが俺と亜衣が交わした最後の会話だった。 もう二度と・・・俺は亜衣と会う事も話す事も無かった。 そして十年後・・・ それは”児島フラワーマーケット”というフラワーショップが動画サイトにアップしている動画だった。 とても美しい妙齢の女性が咲き誇っている花の解説をしている。 いつが開花期なのか、肥料は何が適しているのか、切り戻しの最適な時期はいつか、水やりの方法など・・・花の特徴に合わせて丁寧に、そしてとても楽しそうに語っている。 その女性は店主である児島充留の妻で、名を児島亜衣と言った。 高校の同級生同士だった彼らは在学中に恋仲になり、なんと学生の頃に籍を入れて第一子を出産しているのだった。 そのフラワーショップでは花の販売の他に、手作りの押し花も売っていた。 全て副店長である児島亜衣の手製のものだった。 子供の頃からの趣味らしく、しおりやポスターなどを押し花で作成して販売している。 その出来は見事なもので全国から彼女の作成する品物を求める声が相次いでいた。 そしてそれが宣伝になり、児島フラワーマーケットは花の注文も多く求められ、開店からわずか数年で最大手に並ぶほど・・・とはいかないまでも、かなりの盛況を誇るようになっていた。 「・・ハァハァ・・・亜衣・・・亜衣・・・・ぁっぁあ・・・・」 一人の男が暗い部屋で、その動画に映る児島亜衣を対象にして自慰行為に耽っていた。 その動画にアダルト的な要素は一切ない。 ただ児島亜衣は妊婦の状態で、現在、第五子を身籠っており腹が膨らんでいた。 「・・・妊娠、してる・・・俺以外の男の赤子を・・・あぁ・・・亜衣、お前の裸・・・綺麗だ。小さな乳輪も可愛いよ・・・亜衣・・亜衣・・・・」
男は児島亜衣が人妻になり、自分以外の男の赤子を身籠っている耐えがたい現実と、一度も見た事のない成人した亜衣の裸と性行為の淫らな妄想を自身の脳内で反芻し続け、自らの脳を破壊していた。 もはや男はそれ以外では性的興奮を得られなくなっていた。 児島亜衣の幼馴染だったその男は在学中に亜衣にフラれたショックで受験に失敗し、浪人するも児島亜衣が映る動画を発見してオナニーに耽り、勉強が全く手につかずそのまま何年も浪人し続けた。 そして四浪が確定した時に進学を諦めニートになった。 「・・亜衣・・・イク・・・イク・・・・うッ・・・・」 ビュルビュルと結びつく相手のいない汚らしい白濁液が大量に放たれる。 「はぁはぁ・・・・」 荒く息を吐いていると動画の中で男が出てきた。 夫である児島充留だった。 寡黙な男で動画内でほとんど話さないが、妻の亜衣に促されて返事をするように花の育て方を解説する。 そのやり取りを見るだけでとても仲睦まじい夫婦であることが伺えた。 「・・あぁ・・・この男が、亜衣のおっぱいを・・・オマンコを好きなようにしてるんだ・・・・」 動画内の亜衣のカラダを男は凝視する。 服越しでも分かる熟れた豊満な肢体。 しかしどんなに見つめても亜衣の衣服が剥がれて裸体が見れるわけではない。 彼女の裸体を見て触って舐めて蹂躙する事ができるのは亜衣と微笑み合っている夫だけ。 自分は決して・・・生涯に渡りそれを見る事も触る事も叶わない。 「・・ぅ・・うぅ・・・・」 くやしさと惨めさが男を襲う。 それと同時にその夫から性的に蹂躙される亜衣の淫らな様相が頭に浮かび、再びみっともなく勃起してしまう。 「・・・あぁ・・・亜衣・・・亜衣ッ・・・・亜衣ッッ・・・・・」 そしてその日も朝から晩までオナニーに耽り、男の一日は終わった。 このような惨めで終わっている日々が延々と生涯に渡り続き、六十五歳の冬・・・相変らずの暗い部屋で児島亜衣の幼馴染だった男の人生は誰に看取られる事も無く、ひっそりと幕を下ろしたのだった。 それはまるで花の一つも咲かない・・・渇き枯れ果てた荒野で絶望と諦観の風を吹き付けられ、ポキリと折れてしまった枯れ木のような人生であった。

─ 彼は寡黙な人だけどセックスの時は激しいの♡ ─

「・・・くしゅん」 私はくしゃみをしてしまう。 外はすっかり冬の気候で湯上りの体が冷えてしまったようだった。 「あ、ごめんな。寒いよな。」 「ううん、大丈夫だよ。」 私は鼻をぐずらせながら笑って返事をする。 ここは自室のベットの上。 窓を開けてお向かいで同じように窓を開けている幼馴染の男の子と話をしていた。 内容は勉強の話。 彼とは一緒の大学に行くと約束していて、その大学に受かるために私は猛勉強中なのだった。 だけど私は頭があまり良くなくて、彼から勉強のスケジュールを立ててもらって勉強を見てもらっていた。 「えへへ・・・」 くしゃみをしたのが気恥ずかしくて私は照れ笑いをする。 「もう十二月の中旬だしな。風邪ひくとマズイ。今日はもう寝よう」 「うん、そうだね。」 私と彼は窓から少し乗り出していた体を引っ込める。 「それじゃ、亜衣。おやすみ。」 「うん、おやすみなさい。」 私たちはそう言って窓とカーテンを閉めた。 カーテンを閉めた後、私は机に向かう。 勉強するため・・・ではなく、趣味の押し花をラミネート加工してしおりにするためだった。 「大学かぁ・・・」 私は呟く。 別に・・・大学に行きたいってわけじゃない。 はっきり言うと勉強は嫌いだった。 でも幼馴染の彼が絶対に一緒の大学に行くんだって聞かなくて、私はそれに付き合っているのだった。 彼との関係は昔からそうだった。 鈍くてトロい私を彼が手を引いて連れ回す。 どこでも一緒。 私は彼の言う事に頷いてその通りにする。 遊ぶのも、ご飯を食べるのも、走るのも、歩くのも・・・彼の指示通りにやってきた。 今の高校に入学したのも彼がこの学校への進学を希望していて、私も一緒に連れて行くと言ったからだった。 だから私は高校受験の時も彼の言う通りに勉強して見事に合格した。 今も彼の指定する参考書と問題を解いて覚えてを繰り返して、学内の成績上位をキープしている。 彼の言う通りにしていれば何も問題は無かった。 でも・・・・ (そんな幼稚な趣味はやめろ。俺がもっと良いしおりを買ってやるから) 彼は私の趣味の押し花やそれを利用したしおり作りに良い顔をしない。 やめろと言ってくる。 「はぁ・・・」 私はため息を吐く。 漠然と・・・自分はこのままで良いのだろうか、と思うようになった。 何でも彼の言う通りにして・・・確かにそれで全部上手くいった。 きっとこれからもそうなんだと思う。 彼の希望する大学は国内でも最難関に位置する難関大学で、その中でも取り分け競争率の高い学部と学科に入学を希望していた。 彼なら余裕で合格するだろう。 そして成績が芳しくなかった私も彼が作ったカリキュラムの通りに勉強すると、びっくりするくらいに成績が上がってその大学に合格できる射程圏内にあっという間に収まってしまった。 希望している大学の学部学科を卒業すれば将来は安泰だと彼は言っていて、確かに就職先の一覧を見ると誰もが知っている超一流の企業名がズラリと並んでいた。 ・・・・・・彼の言う通りにしていれば良い。 私はそれで良いんだ。 今までずっとそれで上手くやってきたんだから。 でも・・・・・その彼は私の趣味の押し花としおり作りをやめろと言ってくる。 幼稚だ、みすぼらしい、くだらない・・・と、切って捨てる。 「・・・・・はぁ・・・」 もう一度、私は盛大にため息を吐くのだった。 次の日の朝。私はいつもの電柱の前で彼を待った。 そして定刻通りに彼が玄関から出てくる。 「おはよう」 私はにこやかに笑って挨拶をする。 「ああ、おはよう。亜衣」 彼も挨拶をし返す。 小学生の頃から私たちは一緒に登下校をしている。 何気ない会話・・・世間話や天気の話をしながら登校する。 全くいつもと変わらない風景。 ・・・・・・・・いや、正確には季節ごとに通学途中の風景は変わってる。 私は学校の中庭に置かれた鉢植えに目をやる。 そこにはアリッサムの花が見事に咲き誇り、その鉢植えがずらりと五鉢ほど並んで、その向かい側にはカレンデュラが同じ数の鉢だけ並べられていた。 中庭を通るなら必ず目にする鉢植えだけど、少し前・・・十月はゼラニウムとスーパートレニア、夏はエボルブルス、春にはミオソティスとマーガレットが見事に咲いていた。 「どうしたんだ?亜衣」 彼が鉢植えに目をやっていた私に聞いてきた。 「・・・うん、凄いなぁって思って」 私が返事をすると彼は鉢植えに目をやる。 「何が凄いんだ?」 「中庭の花壇って春も夏も秋も冬も一年中いつも花が咲いてるんだよ。季節に合わせて咲いてる花も違うの。たぶん鉢植えを季節ごとに移動させてるんだと思う。」 「・・・ふーん」 彼は興味なさげに返事をする。 「ほら見て。このアリッサム。こんなに形良くたくさん花を咲かせるなんて・・・株の形が崩れないように丁寧に切り戻しをしっかりしてるんだよ。」 「・・・あ、そうなんだ」 「綺麗だなぁ・・・誰が育ててるんだろ。少し分けてもらえないかな・・・しおりの押し花に使いたいな・・・」 アリッサム・・・スノープリンセスの綺麗な白い花弁を見ながら私は呟く。 すると彼がその言葉に反応した。 「まだ手製で押し花のしおりなんて作ってるのか?」 私はビクっと肩を震わせる。 「あ、うん・・・ごめんね。」 「そんな子供っぽい事はもうやめろって言ったじゃないか」 「う・・・うん。」 私は頷いた後、黙ってうつむく。 「俺がこの間の誕生日に買ってきてやったしおりはどうしたんだ?」 それは彼がプレゼントしてくれたアンティーク風の・・・結構な値の張る高級品のしおりの事だ。 「え・・・あ、ごめん・・・アレね・・・使うのがもったいなくて、汚したくなくて・・・タンスに保管してるの」 「何だよ、使わないと意味ないじゃないか」 「う、うん・・・ご、ごめん。」 ・・・・・嘘だった。 タンスに保管しているのは本当だけど・・・使うのがもったいないから使わないのではなくて、好みのデザインではないからあまり使いたくなかっただけだった。 「・・・まぁ、いいや。お前ももういい年齢なんだからさ、そんな幼稚な趣味なんて早くやめろよ」 「う・・・うん。」 また幼稚な趣味と言われた。 そうなのかな・・・と悲しくなってしまう。 「ほら、早く行くぞ。いつまでもこんな所にいたら寒いだろ」 彼が私の手を取り、引っ張りながら教室へと向かう。 でも私は・・・振り向いて中庭の鉢植えに目をやっていたのだった。 昼休みになった。 幼馴染の彼は学食へと足を運び、私は教室でお弁当を友人と食べる。 食事しながら談笑して、ふと窓の外に目をやる。 中庭の花壇が目に入った。 「ん?どうしたの、亜衣。」 友人の中野和香(なかの のどか)が聞いてきた。 「あ・・・うん。中庭の花・・・綺麗だなぁって思って」 「あー・・確かにね。アイツいつも頑張って手入れしてるもんね」 私はその言葉に驚く。 「和香ちゃん、あの花を育ててる人知ってるの?」 「え?あ、うん。私の幼馴染だよ。園芸部の。」 まさかこんな身近にいただなんて・・・びっくりだった。 「どこのクラスの人なの?」 「ウチのクラスだよ」 「えっ!?・・・だ、誰ッ!?」 私は身を乗り出す勢いで聞く。 「アイツだよ」 和香ちゃんが指を差す先に・・・一人の男子生徒がいた。 教室の一番後ろの端。廊下側。 もそもそと菓子パンを食べていた。 確か名前は・・・ 「えっと・・・児島・・・君?」 苗字は辛うじて覚えていたけれど名までは知らない。 「うん。児島充留。・・・無口で不愛想なんだけど根は良い奴だよ。」 花を分けて貰う絶好の機会だけど、私は尻込みしてしまう。 幼馴染の彼以外の男の人と話なんて、ほとんどした事がない。 私がソワソワしていると・・・ 「おーい、ミツルー。亜衣がアンタに話があるってー」 和香ちゃんが大声で児島君を呼んだ。 「ちょ、ちょっと和香ちゃんッ!?」 私は慌てて和香ちゃんを止めようとするけれど遅かった。 児島君を見ると彼はゆっくりとこちらを向いて・・・・すぐに視線を菓子パンに戻し、また食べ始めた。 「・・・・・・」 「・・・・はぁ・・」 私は無視されて唖然とし、和香ちゃんは頭を抱えて溜息を吐く。 「ごめんねー・・・アイツ昔からあんなでさー」 「う・・・うん。」 再び和香ちゃんが大声で児島君を呼ぶ。 「ミツルッ!!、こっち来て!」 児島君は食べていたパンを飲み込んで、 「・・・・用事があるならそっちからこっちに来てよ」 と言った。 ・・・不思議な声だった。 そんなに大声じゃないのに・・・彼の声はよく通ってはっきりと耳に残る。 「アンタね・・・、学校随一の爆乳美少女、大庭亜衣がお呼びなのよ?男なら喜び勇んで馳せ参じなさいよッ!!」 「・・・ッ!!・・・・の、和香ちゃんッ!!!」 そんな恥ずかしい名称で私を呼ばないでッ・・・と内心で叫ぶ。 赤面しながら児島君を見ると・・・ 「・・・・知らないよ」 彼は再びそっぽ向いてパンを齧って、パックの牛乳を飲み干す。 どうやら彼の食事はそれで終わりらしい。 男の人があんな軽い食事で大丈夫なのかな?・・・と思った。 「・・・ごめんねー、亜衣。ああいう奴でさー・・・。」 「う、ううん。気にしないで、和香ちゃん。」 私はちょっと迷ったけれど、席を立って児島君の元へ向かう。 「え?あ・・・亜衣?」 和香ちゃんは私のその行動が意外だったみたいであっけに取られていた。 彼の席まで歩いて行き、児島君と向き合う。 体型は中肉中背で、顔は・・・長い前髪で目元が隠れていてよく見えない。 でも顔がこちらを向いているから、きっと私を認識はしているのだと思う。 「・・・・・何か用?」 彼が静かに聞いてきた。 「あ、あの・・・中庭の花、なんだけど・・・あなたが・・児島君が育ててるの?」 「うん、そうだよ。」 彼はあっけらかんと答えた。 どうやって話を続けよう・・・緊張して上手く話せない。 「・・・ぇ、・・・と・・・、は、花を・・・・・・分けて、ほしいな・・・って・・・・・」 「・・・・アリッサムの方?それともカレンデュラ?」 「ア、アリッサムの方を・・・・」 「何に使うの?」 「・・ぁ、・・・お、押し花に・・・手作りの、しおりを作ってて・・・それで・・・・」 「そうなんだ。分かった・・いいよ。放課後に園芸部の部室においで。切り分けてあげる。」 ・・・あっさりと段取りが決まった。 「それじゃ、放課後に。」 「う、うん。」 彼が席を立って教室を出て行った。 私も自分の席に戻る。 和香ちゃんがパックのオレンジジュースのストローを咥えながら聞いてきた。 「大丈夫なの?」 「・・・?」 私は和香ちゃんが何の事を言ってるのか分からなかった。 「幼馴染の彼君だよ。今まで絶対に一緒に帰ってたじゃん」 「あ・・・」 私は失念していた事に気づいた。 何て説明しよう・・・。 「・・・まぁ、彼君と少し距離を置く良い機会なんじゃない?ちょっとあの人、異常だと思うし」 「え・・・?そ・・・そうかな?」 「だってアンタ、わざわざ彼君と一緒に帰って・・・それからまたすぐに出かけて私らと合流して遊びに行くじゃん?アレ意味不明だよ。」 それは・・・そうかもしれない。 でも彼と登下校をするのは子供の頃からの習慣で、彼もそれを喜んでくれるし・・・一緒に帰らないと不機嫌になって怒るし・・・。 しばらく思い悩んでいると、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。 私は・・・答えを出せないまま午後の授業を受けるのだった。 放課後になった。 結局、彼に何と言って切り出すか決めずじまいでその時がきた。 「亜衣、一緒に帰ろうぜ。」 彼が声を掛けてくる。 「あ・・・ごめんね、今日は・・その、用事があって・・・」 どうにかそれだけを言葉にする。 正直に話せば、趣味のしおり作りの事まで話さないといけなくなる。 幼稚な趣味だからやめろと今朝に言われたばかりなのだ。 またきっと怒られてしまう。 おそるおそる彼を伺うと・・・ 「あ、そうなのか」 あっけらかんとした様子で頷いた。 「う、うん・・・ちょっと時間が掛かるかもしれないから先に帰ってて。」 「そうか・・・分かったよ。それじゃ先に帰るな」 「うん、じゃあね。」 ・・・思いのほかあっさりと承諾を得られたので拍子抜けしてしまう。 私は手を振って教室を出る彼を見送った。 「あら・・・上手くいったじゃん」 隣にいた和香ちゃんが言う。 「う、うん。」 私は返事をして児島君の席を見る。 児島君は席を外していていなかった。 でも荷物はそのままなのでトイレにでも行っているのだろう。 しばらく待っていると児島君が戻ってきた。 「あ・・・あの・・・」 昼休みの約束を覚えているだろうか・・・? 「ごめん、待たせた・・・それじゃ、行こうか」 それだけ言って、児島君はカバンを持ち教室からさっさと出て行ってしまう。 私も慌ててカバンを持って、 「の、和香ちゃん、また明日ね」 「うん、また明日ー」 和香ちゃんに別れを告げて、急いで彼の後を追った。 私は児島君と一緒に園芸部室のある旧校舎に向かっていた。 でも・・・ (あ、歩くの・・早い・・・・) 私は児島君の歩くペースに合わせるのに必死だった。 とにかく歩くのが早い。 (な、何でこんなに早く歩くの・・・?) しかも会話が一切無かった。 何か怒らせるような事をしてしまったのだろうかと不安になる。 私は和香ちゃんの言葉を思い出す。 『アイツ、すごい愛想悪いけど気にしなくて良いよ。別に怒ってるわけじゃないから』 そう言っていた。 旧校舎の中に入って、一階の端の教室・・・園芸部の入口の前に着く。 児島君がポケットから鍵を取り出して扉を開いた。 「いいよ・・・入って」 私は促されるまま教室に足を踏み入れる。 教室の中にはスコップや肥料の袋、日誌の束、植物関連の本などが置いてあった。 児島君は教室にあった机の引き出しからハサミと紙袋を取り出す。 「切り分けるのは一房で良いかな?」 私はいきなり声を掛けられて慌てる。 「う、うん・・・大丈夫・・だよ」 返事をすると、児島君はそれには答えずに足早に教室から出ていく。 (こ・・・コミュニケーションが・・・・) すごく取りづらい。 また私は慌てて彼の後を追う。 今度は中庭の花壇に向かって。 中庭の鉢植えの前で児島君が白い花・・・アリッサムを睨んでいた。 「・・・・ごめん。しおりに適した花って・・・どんなのなの?」 彼が私に聞いてくる。 「えっ・・・と、形が良くて・・色合いが綺麗なのが・・・」 「・・・・だったら、これでどうかな?」 児島君が花の一房を優しく掴んで私に見せてくる。 その一房にはしっかりとした花弁に、綺麗で鮮やかな白色が乗っていた。 「あ、うん。それ・・・それが、良いかも・・・・」 私がそう言うと彼は返事もせず、それにハサミを入れて切り分けてくれた。 持ってきた茶色の紙袋に入れてくれて、丁寧に封をして・・・・ 「・・・はい、どうぞ」 そう言って私にそれを渡してくれた。 「あ、ありがとう・・・・」 私は受け取ってお礼を言う。 「・・・・・」 「・・・・・」 これで用事は終わった。 ・・・どことなく気まずい沈黙が流れる。 『用は済んだのでさっさと帰ります、ではさようなら』というのは、いささか薄情なのではないかと考えてしまう。 私が何を言えば・・・どうすれば良いのか思案していると・・・ 「・・・お茶でも飲んでいく?」 児島君が提案してきた。 「う、うん。」 私はそれに素直に頷いた。 園芸部には奥の方にある扉の向こうに準備室があった。 私と児島君はそこで紅茶を飲んで話をしていた。 「・・・へぇ・・これは、すごいね」 児島君が私の手製のしおりを見て感想を言った。 「そ、そうかな・・・・あの・・そういう趣味って・・・幼稚、じゃない?」 「・・・え?」 児島君が私の言葉に驚く。 「・・・なんでしおり作りが幼稚なの?」 「えっと、そう言う人が・・・いて・・・・幼稚だからもう止めろって・・・」 「・・意味が分からない。それはその人が勝手にそう思い込んでいるだけだと思う。」 「・・・・・」 「このラッピング・・・手でやらずに、ちゃんとラミネーターを使ってるよね?」 今度は私が驚いた。 「わ・・・分かるの・・・?」 「うん、少しだけ・・・押し花のラミネート加工は熱処理が出来ないからコールドラミネーターじゃないと駄目だったはずだ。・・・・結構、値の張る買い物だったんじゃないかな?」 その通りだった。 バイトでも出来ればよかったのだけど、ウチの高校は原則としてアルバイトは禁止だった。 なので貯めてたお小遣いをはたいてコールド仕様のラミネーターを買ったのだった。 「・・・とても綺麗に水分を抜いてあるし、配置にもセンスがある。」 児島君が私の目を見つめて・・・ 「僕はこのしおり・・・・好きだよ。」 ・・・・私は瞬間的に顔が真っ赤になるのを自覚した。 自分が一生懸命に打ち込んできたことを認めてくれて・・・・好き・・・と言ってくれたのは、この人が初めてだった。 「あ、あの・・・・」 私は、おずおずと口を開く。 「・・・私、園芸部に・・・・入部しても・・・いい?」 その日の晩は興奮して寝付けなかった。 初めて部活なんてものに入部した。 勢いに任せたところはあったけれど、私の押し花の趣味に沿う部活なのは間違いが無くて・・・英断だったと思う。 『園芸部の活動は朝も早いよ?大丈夫?』 児島君の言葉を思い出す。 (明日は・・・ううん、明日からは早起きしないと) それは普通なら億劫な事かもしれないけど・・・私は心が躍っていた。 新しい道が開いた・・・そういう感覚があった。 でも・・・・携帯が冷たく鳴る。 私は受信したメッセージを見て・・・・ 「・・・・あ・・」 『今日の課題はちゃんと済んだか、亜衣』 そう一言だけ綴られていて・・・たったそれだけで先ほどまでの高揚感が消えてしまった。 幼馴染の彼に・・・なんて説明しよう。 明日からは彼とは登下校できない。 一日だけじゃなくて、これからずっとだ。 彼は絶対に怒るだろうと思う。 でも・・・ 「私・・・わたし・・・・は・・・・・」 目覚ましのタイマーを昨日までよりも一時間だけ早くにセットして・・・眠りにつくのだった。 園芸部の朝の活動はとても楽しかった。 鉢植えに水をやって、肥料を入れ替えて・・・中庭とは別の所で栽培している花の切り分けをやって・・・ 児島君が丁寧にそれを教えてくれて・・・・勉強よりもずっと・・・ずっと楽しかった。 朝のホームルーム前に和香ちゃんと話をする。 「あのね、それでね・・・今度、私も専用の鉢植えで花を育てることになったの」 「へー、何の花を育てるの?」 私が楽しそうに話をするのが嬉しいのか和香ちゃんも楽しそうに相槌を打ってくれる。 とても楽しいひと時だった。 でも・・・予鈴が鳴る少し前に・・・・とても怒っている幼馴染の彼が教室に入ってきて、私に詰め寄ってきた。 「おい、亜衣。」 「あ、おはよう・・・」 私は気まずく挨拶をする。 「何で先に学校に行ってるんだよ。ずっと家の前で待ってたんだぞ」 「ご、ごめんね・・でも、約束してるわけじゃなかったから・・・・」 「何度も携帯にメッセージ送ったんだぞ」 私は慌てて携帯を確認した。 「・・・ご、ごめん。マナーモードにしてて、気づかなかったの。」 「今日の放課後は一緒に帰れるんだよな?」 私はおずおずと返事をする。 「あ、あのね・・・えっと、実はちょっと用事があって・・・・これからは一緒に登校したり下校したり・・・できないと思うの」 彼はそれを聞いて唖然としていたけど、次の瞬間には怒り顔になって怒鳴りつけてきた。 「な・・・何でだよッ・・・用事って何だよッ・・」 「・・ぁ、ぅ・・・・あの、その・・・ごめん。言えないの。」 「何で言えないんだ?何か後ろ暗い事でもしてるのか?」 彼が私を問い詰めようとさらに言葉を強くする。 児島君が席から立ってこちらに向かって来ようとしてるのが見えた。 でもその前に・・・ 「ハイハイ、そこまでー。アンタね、亜衣だって年頃の女の子なんだよ?男子に言えないことの一つや二つあるに決まってるでしょー?」 和香ちゃんが割って入ってくれた。 「和香ちゃん・・・別に私、人に言えないようなことはしてなくって・・・その・・・・」 園芸部に入ったなんて言うと、必ず受験の妨げになると言って反対してくる。 それにしおり作りの事にも言及してくるはずだ。 彼に詳しい事情を説明するなんて出来ない。 私が言い淀んでいると・・・ 「大丈夫、私にまかせなって。・・・アンタね、大体、いっつも亜衣に引っ付きすぎなのよ。私たちが亜衣を放課後に遊びに誘ってもアンタと一緒に帰らないといけないからっていつも断ってるんだよ」 今まで内緒にしていた事を和香ちゃんが口にする。 「本当は亜衣だって私らとカラオケ行ったり買い物したりしたいのにさ。」 彼が”本当なのか?”と言いたげに私を見た。 すっ・・・と、私は彼から目を逸らす。 「どうしても一緒に遊ぶときは、わざわざアンタと一緒に帰って、それからまた出かけて私達と合流して遊びに行くんだよ?」 「・・・和香ちゃん、・・もういいから・・・・」 ちゃんと彼と話をしなかった私もきっと悪いのだ。 私は和香ちゃんを止める。 「・・・そうだったのか、亜衣」 「・・ぁ、ぅ・・・・・」 彼に問われて、俯いてしまう。 「亜衣は内気な性格だってアンタも分かってるでしょ?ちゃんとそこの所をさ、考えてやりなよ」 「・・・・すまなかったな・・亜衣。俺、全然気が付かなくて・・・・」 「う・・ううん、いいんだよ。でも・・・その、これからは・・・一緒に登下校するのは・・・・ちょっと出来ないかも・・・・・」 「・・・そうか・・・・・わかったよ」 「うん、ごめんね。」 そこで予鈴のチャイムがなって、私と彼はそれぞれの席に離れて行った。 次の日の放課後、園芸部の部室で私は児島君から頼まれてた手製のしおりを持ってきて彼に見せていた。 「・・・・・・」 児島君は難しい顔でしおりを睨んでいた。 (一昨日はあんなに褒めてくれたのに・・・) 何か良くないのだろうか、と不安になる。 「ねぇ・・・大庭さん。」 「え?・・・うん・・・・・」 私はいきなり呼ばれて少し面食らってしまう。 「このしおり・・・販売してみない?」 「・・・え?」 そして続く言葉にさらに驚く。 私の作ったしおりを・・・売る? ・・・そんな事、考えた事もなかった。 「そ・・・そんな、私の手作りのしおりなんて・・・・売れるわけ・・・」 「いや、絶対に売れると思う。ほんとにスゴイよ・・・これは。」 いくら何でもほめ過ぎだと思った。 「素人が・・・ちょっと趣味でやってるだけだよ・・・」 「そういうのが売れたりするんだよ」 「そ・・・そうなの・・?」 児島君が言うにはネットのフリーマーケットのサイトなどで手製のぬいぐるみや衣類、人形などが売り買いされてるらしかった。 そこに私のしおりを試しに出品してみたらどうかと勧められた。 「でも私・・・やり方が分からない・・」 「僕がやってあげるよ。実は両親の名義を借りてネットのフリマで花の販売をやってるんだ」 児島君は自宅で育てた花を鉢ごと売ってるのだそうだ。 高校生でそんな事ができる人がいるんだ、と感心する。 私のしおりもそのサイトのアカウントで売ってみたいと児島君は言う。 「もちろん、しおりの売り上げの分は大庭さんに全額支払うよ。」 児島君がどうしてもと言うので、私は今日持ってきた分を彼に渡して販売してもらう事にした。 この時の私はきっと売れずに残ってしまうに違いないと思っていたのだった。 その次の日、早朝の園芸部室・・・ 「大庭さん、しおり全部売れたよ。」 児島君の報告に私は驚く。 「え・・・えぇ?・・・・そんな、嘘・・」 「本当だよ。出品から三時間で完売した。売れるだろうとは思ってたけど・・・まさかこんなに早く売れるなんて思わなかった。」 五枚のしおりをそれぞれ五百円で売ったから、合計二千五百円の利益が出たそうだ。 でもそこからフリマサイトが三割の金額を差し引くから純利益は千七百五十円になるらしかった。 「こんな茶封筒で申し訳ないけど・・・はい、しおりの売り上げ分だよ。」 私は恐縮してしまう。 「そ、そんな・・・受け取れないよ」 「え?・・・いや何言ってるの。大庭さんの作ったしおりの利益なんだから大庭さんが貰わないとおかしいよ。」 それはそうなんだけど・・・あんな、ちょっと趣味で作っただけの代物にお金が払われるなんて・・・ 「はい・・・受け取って。」 私はその茶封筒を受け取る。 重くはないはずなのに・・・重く感じる。 初めて・・・私はお金を稼ぐ経験をした。 「大庭さんのしおり・・・すごく評価が高いよ。コメント見てみる?」 児島君が携帯の画面を操作してそれを見せてくれた。 『すごく可愛いです!見た瞬間、絶対欲しいと思いました!!』 『届くのが楽しみです。以前、とても綺麗なパンジーの花を購入したのですが、押し花も売り始めたのですね』 『買えなかったよぉ(T T)‥お願いします、再販してください』 『すごく綺麗にラミネートされてますね、手でやったのかな・・・いや、これはたぶんコールドラミネーターを使用してますね』 『丁寧に仕上げてるし、これはセンスあるわぁ・・・ひょっとしてプロ雇いました?w』 そこには高評価と再販の希望コメントがズラリと並んでいた。 「・・・・・・・・・・」 私は絶句してしまう。 だって・・・だって・・信じられない。 「大庭さん・・・放課後にちょっと真面目な話があるんだ。いいかな?」 児島君が改まってそんな事を言ってくる。 「う、うん・・・」 しばらくの間、私は目の前の現実が信じられなくて呆然としていたのだった。 その日の放課後、園芸部室・・・ 「大庭さん・・・実は僕、高校を卒業したらフラワーショップを始めるつもりなんだ」 児島君が自分の進路を私に話してくれた。 児島君の両親は昔、花屋・・・フラワーショップをやっていたらしい。 でも業績が振るわずに、やむなく廃業することになったのだそうだ。 「僕が小学三年生の頃の話だよ」 とても悲しそうに児島君は話していた。 児島君は両親の営業する花屋が大好きだったそうだ。 でもお店を畳むことになって・・・大人になったら自分がもう一度花屋を始めて、両親が上手くやれなかった事を自分がやるんだと心に決めていると語った。 「父さんも母さんも反対したんだ。でも・・・僕はどうしてもやりたいって話をして、卒業後に開業する事になったんだ。」 児島君のご両親は子供に下手な冒険はさせずに堅実に生きる道を選んで欲しかったそうだ。 だからとても苦労して児島君が大学に行くための資金を貯めて、進学校に入学させたのだと話した。 「父と母が僕が大学に行くために貯めたお金を借りて開業するんだ・・・・失敗は許されない」 私はその話を聞きながら、内心で児島君の行動力と決断力に驚いていた。 クラスでは目立たずに、陰キャだとか根暗だとか言われているけれど・・・実際はとても誠実で熱意を持ってる人だった。 「でも・・・このまま開業しても僕は失敗すると思う」 沈痛な面持ちで児島君は話を続ける。 「そ、そんな・・・どうして・・・?」 「既存のショップが幅を効かせてるから、個人が新規で花屋を始めても数年も持たずに廃業する事がほとんどなんだ。」 どうやらとても厳しい業界であるらしかった。 「ただ花を育てて売るだけだと・・・きっと僕は両親と同じ道を辿る事になると思うんだ」 懸命に努力を重ね、夢を持って勇気を出して挑戦したのに・・・・社会の荒波にその夢を打ち砕かれ、振り絞った勇気は色あせて・・・心は絶望と諦観に染まり、積み重ねた努力は無為なものに成り果てる。 そんなことを体験してしまったら・・・人の心はどうなってしまうのだろう・・・? それを想像しただけで私は足が竦んだ。 “世の中はそんなに甘くない”・・・その片鱗を垣間見た気がした。 「それにフラワーショップは華やかなイメージがあるかもしれないけれど、実際はとても泥臭くて力仕事もある。経営や宣伝もしないといけない。僕一人ではとても回せないから人を雇わないといけないんだけど・・・そのツテもない」 聞けば聞くほどに厳しい現実が彼の両肩に圧し掛かってるのが分かった。 「だから・・・大庭さん」 児島君が私を真っすぐに見つめて言う。 「僕を助けてほしいんだ・・・大庭さんの力を借りたい。」 私は思いも寄らなかった言葉を掛けられて驚く。 「わ、私・・・?で、でも私なんて、何もできない・・・・」 「大庭さんの作った押し花の販売も同時にやろうと思うんだ。」 どうやら児島君は私の押し花の販売を通じて、自身のフラワーショップの宣伝をするつもりらしかった。 「大庭さんのしおりが売れるのを見て・・・これだ、って思ったんだ。花を売るだけじゃなくて何かプラスの要素がほしい・・・いや、絶対に必要なんだ。」 児島君は真剣だった。 どうやら私の返事の如何によって将来が大きく分岐すると感じているらしかった。 私は・・・今朝のフリマサイトのコメントを思い出す。 『また欲しい』『ありがとう』『届くのが楽しみ』・・・そんな、何気ない言葉。 その何気ない言葉が・・・私はとても嬉しかった。 こんな自分でも誰かを喜ばせる事が出来るんだって・・・社会でちゃんと役に立てるんだって思えた。 この選択次第で将来が大きく分岐するのは・・・私も同じなんだと気付く。 「・・・・・・・・・うん。・・・いいよ。私、児島君と一緒に・・・頑張る」 私は決断した。 でも・・・園芸部に入部した時やしおりが売れた時のような高揚感はなかった。 足が、震える。 上手くいく保証のない道に足を踏み出してしまったという確信があった。 これからどうなってしまうのか分からない。 怖い。 体温が急に下がったような寒さが襲ってくる。 私が凍えて震えていると・・・ふと手が暖かくなった。 「ありがとう・・・大庭さん」 顔を上げればそこには・・・・児島君の安堵した・・・希望を見出したような笑顔があった。 (そうだ・・・私は一人じゃないんだ・・・・児島君と一緒に・・・頑張るんだ・・・・) 彼が私の手を握っている。 それを私は優しく握り返す。 「あ・・・ご、ごめん。つい、思わず握ってしまって・・・」 児島君が慌てて手を離そうとする。 私はそれを止めてさらに強く彼の手を握る。 「・・・・・・お願い、離さないで・・・・・」 「・・・・・・・うん・・・分かった・・・」 彼と私は手を握り合って、その日はただ静かに時を過ごした。 時刻が夕刻の六時になって、完全下校時刻の予鈴が鳴る。 あと三十分で帰り支度をして学校から出なければならない。 巡回してくる警備員のおじさんに見つかると怒られてしまう。 でも・・・この分室には窓がない。 だから出入口の扉を閉めてしまえば泊まってもバレないと、児島君は言っていた。 深夜にしか咲かない花・・・オシロイバナやヨルガオ、月下美人などの花を観察するために寝泊まりする事が稀にあるのだそうだ。 私は・・・その時のために用意されている部屋の隅のベッドに目が行く。 (もしも・・・もしも今、児島君が・・・・・”そういうコト”に・・・誘ってきたら・・・私、わたし・・・・・・・・) 彼の手の温もりを・・・体温を感じながら”そういうコト”を想像をしてしまう。 でも・・・ 「・・・・そろそろ帰ろうか」 児島君が帰宅を提案してきた。 「・・・・・うん。」 私はそれを心のどこかで残念に思いながら繋いでいた手を離す。 それから私達は荷物を纏めて帰る準備を始める。 私が鞄のチャックを閉めようとしたところで、 「・・・大庭さん」 児島君が声を掛けてきた。 「良かったら明日、学校の帰りに・・・これ、行ってみない?」 彼が差し出してきたそれは現在開催中の花の展覧会のチケットだった。 「うん、いいよ。」 私はそのチケットを受け取る。 彼からのデートの誘いを断る理由なんて無い。 マフラーを巻いて、鞄を持って・・・私と児島君は当たり前のように手を繋ぎ・・・共に帰路につくのだった。 次の日、展覧会の後・・・ 「すごかったね・・・あんなに綺麗に薔薇を咲かせることが出来るんだ・・・」 「ああ・・・とても綺麗だった」 私と児島君は先ほどまで見て回っていた展覧会の事を語りながら、ショッピングモールを歩いていた。 「生け花のショーも凄かったな・・・」 「大庭さんも今度、やってみる?」 「え、えぇ・・?私は無理だよぉ・・・」 彼とレストランで食事をしている最中もこんな感じで楽しい会話が途切れる事はなかった。 児島君と一緒にいると本当に楽しい。 私達は・・・移動する際はずっと手を繋いでいた。 「あ・・・これ、可愛い」 私はショーウィンドウに展示されているブレスレットに目が行く。 シンプルな作りだけどアクセントとして埋め込まれているサファイアが綺麗だった。 値札を見ると・・・ 「・・・あはは・・」 私は思わず苦笑してしまう。 高校生のお小遣いで手を出すにはちょっと無理目なお値段だった。 率直な値段を言うと五万円近くした。 アルバイトでも出来れば良いけど・・・校則で原則禁止されている。 「・・・大庭さん、入ろう」 「・・・え?」 私は児島君に連れられてそのお店に入る。 「すみません。そこに展示されているブレスレット頂けますか?」 私が、え?え?・・・と困惑している内に児島君はそのブレスレットを購入してしまう。 「支払いはこれでお願いします」 キャッシュカードを店員さんに渡して、あっという間に決済が済んだ。 児島君が私の手を取って・・・そのブレスレットを私の左手首につけてくれた。 「うん・・・すごくよく似合ってる」 「こ、児島君・・・・こ、こんな高価なもの・・・・」 私が困惑していると、 「良いんだ・・・僕が大庭さんに送りたかったんだから」 そう言って私の手を握って微笑みかけてくる。 近くにいた店員さんが微笑ましそうに私達を見ていた。 「う・・・うん。ありがとう・・・・児島君」 私はその日送られたブレスレットを、ずっと・・・ずっと大切にするのだった。 「本当に気にしなくて良いからね?」 お店を出て手を繋いで歩いている最中も、私はそのブレスレットを見ていた。 「学校には内緒なんだけど・・・花を売ってるって前に言ったよね?その売り上げが三十万近くはあるんだ。だから五万円程度ならそんなでもないから」 ・・・そんなわけない。 三十万円の内の五万円といったら・・・相当な割合だ。 私が何か言いたげにしてると・・・ 「受け取ってほしい」 真剣に言われた。 「・・・・・・うん。」 私は胸がドキドキして、頷く。 明らかに私は児島君の中で特別な人になっていた。 それは私も同じで・・・
私は握ってる手をそのままに、児島君の腕に自分の腕を絡めた。 私の乳房が児島君の二の腕に当たってたわむ。 「・・・お、大庭さん・・・」 「・・・・・・」 児島君は驚いていたけど・・・彼はゆっくりと、繋いでる手の私の指と自分の指を絡めて・・・私達の手を”恋人繋ぎ”にした。 「・・・児島君・・・歩く速さ・・・・遅いね・・・どうして?」 私と児島君が初めて園芸部に向かった時の事を思い出す。 本来、児島君はもっと速く歩く人なのだ。 でも・・・私と歩くときはゆっくり歩いてくれるようになった。今も・・・・・そうだった。 「・・・大庭さんともっと長く一緒に居たいから・・・ちょっとだけゆっくり歩いても良いかなって。」 ・・・胸が、高鳴る。 ドキドキする。 頬が紅潮しているのが自分でも分かる。 誰かと一緒に歩いているだけでこんな気持ちになった事なんてなかった。 幼馴染の男の子とは登下校で何年も一緒に歩いたけれど・・・彼が私をこんな気持ちにさせた事は一度もなかった。 私達はショッピングモールの屋上に来た。 そこは・・・いわゆるデートスポットだった。 中央に設置されている噴水が光のイルミネーションに彩られて美しい。 今日は金曜日・・・時刻は夜の七時過ぎ。 両親には・・・もしかしたら今日から月曜日まで外泊するかも、と告げていた。 和香ちゃんに口裏を合わせてもらっている。 何となく・・・予感があったから。 児島君がふいに私を抱きしめた。 彼の・・・意外と逞しい両腕が、私の両肩から背中を覆う。 私の顔が彼の首筋と鎖骨の辺りに寄せられる。 スゥ・・・っと鼻から息を吸うと、児島君の匂いがした。 男の人の汗と・・・フェロモンの匂い。 頭がクラクラして、私は自分の股間が湿り気を帯びていくのを自覚する。 「大庭さん・・・好きだ。」 「・・・うん。」 「僕と・・・付き合ってほしい。」 「・・・・・はい。」 私と児島君は見つめ合って・・・目を閉じて・・・・・唇を重ねた。 児島君のお父様は現在、単身赴任中でお母様もそれについて行ってるそうだった。 だから児島家には今・・・充留君と私しか居ない。 二階にある彼の部屋。 園芸部の部室と同じで植物の本や肥料、その他の栽培道具がたくさんあった。 でも就寝をする部屋なのだから、そこには当然ベッドもあって・・・ 「亜衣・・・」 充留君が私の頬に手を寄せて、私の名前を呼ぶ。 部屋の電気は付けていない。 それは私の要望。 だって・・・やっぱり恥ずかしいもの。 でもカーテンは開けている。 それは充留君の要望。 月明かりが部屋に入ってきて、完全な暗闇になるのを防いでいる。 やっぱり充留君もオトコの人で、ちゃんと見たい・・・そうだ。 「・・・ん、チュ・・・・」 私と充留君は二度目のキスをした。 「・・・ぅ、チュル、・・・ん、チュ・・・レル、チュパ、レロォ・・・・ン、ちゅ・・・」 ファーストキスとは違って、私と充留君は舌を絡ませ合う。 チュパチュパと唾液を交換して舌を離す。 ツー・・・とお互いの舌先から糸が引いて、月光に照らされて光る。 充留君が私の制服のリボンに手を掛けて外す。 そのままボタンにも手を掛けて上から順に外していく。 第二第三のボタンを外すと抑え込まれていた私の乳房が膨らむ。 「・・・すごい・・・・大きい」 充留君がその光景に素直な感想を言う。 「・・・男の人はみんな私のおっぱい見るけど・・・充留君は見てくれないよね?」 私はそれが少し不満だった。 男に見られるのが好きなわけじゃない。 充留君には見て欲しかった。 「え・・・ご、ごめん。だって・・・不快な思いをさせてしまうかなって思って」 「充留君になら・・・全然、嫌じゃない・・・よ」 私は胸を少しだけ反らして、乳房を彼に寄せる。 「なら・・・触っても、良いよね?」 私は頷く。 「・・・ア・・・ん、ぅ・・・」 ブラジャー越しに充留君が私の乳房を撫でた。 「・・・・みつ、る君・・・ブラのホック・・・・外して・・・・前にある、から・・・・」 私はお気に入りの可愛い下着を着ていた。 こういうコトするかもって思ってたから。 充留君がホックに手を掛けて、プチッ・・と音がしてブラが外れる。 その瞬間に、たわん・・と乳房が落ちて震えた。 ブラを完全に取って、私の乳房が露わになる。 私は思わず両手で乳房を隠す。 「亜衣・・・どうして隠すの?」 「・・・ぅぅ・・・だって、やっぱり・・・恥ずかしい・・・・・私・・・・乳輪が、大きくて・・・・・・」 ちょっと品性がないんじゃないですか、というくらいに乳房と乳輪が大きいのだ。 充留君に下品なカラダなんて思われたくない。 「見せて?・・・亜衣のおっぱいが見たい。」 私は充留君に・・・私の彼氏に求められて、手をどけた。
「・・・・・・すごく綺麗だ。」 「・・そんな・・・嘘・・・」 「嘘じゃないよ・・・・まるで花が咲いてるみたいだ」 充留君が私の乳首を指で優しく撫でる。 繊細な花弁に触れる時みたいに優しく。 「・・・ん、ぁ・・・・そんな、に・・・弄っちゃ、らめ・・・・んゥ、チュッ、チュパ・・・ン・・・」 乳首を弄られながら私は唇を塞がれる。 そのままベッドに押し倒されて・・・・・私と充留君は生まれて初めてのセックスをする事になった。 クチュクチュと、私の股間から卑猥な音が出て・・・部屋に響く。 「充留、く・・・あんま、り・・・おまんこと、クリトリス・・・弄らな・・・ん、っぁっぁ・・・」 「亜衣は・・・乳輪だけじゃなくて・・・・こっちの花もすごく綺麗なんだね」 「・・・そんな、とこ・・・全然、綺麗じゃ・・・ないよぉ・・・・・」 「ううん、とても綺麗だよ」 ジュるジュルと、充留君が私の秘所に吸い付いた。 「ひゥッ!!・・・・っぁ、ア・・・らめッ・・・充留、くん・・・っぁアアぁああっぁ・・・・」 とめどなく溢れている私の愛液を、愛しの彼に吸われているのを股間から感じる。 カラダがそれを嬉しく思って、さらに私は愛液を分泌させる。 ひとしきり私のを吸って飲んで満足したのか充留君は顔を上げた。 私はもう股をだらしなく拡げて、局所を晒す事に抵抗が無くなっていた。 彼の方に目を向けると、充留君の・・・勃起したチンコが見えた。 (あれが・・・今から・・私の膣に・・・・入っちゃうんだ・・・・) 充留君が私の腰を掴んで引き寄せる。 それだけで私のカラダは犯される事を理解して、自然と腰を浮かせた。 充留君がグリグリと私のアソコを弄って・・・・彼が腰に力を入れる。 ブチィッ・・・と音が聞こえたような気がした。 私の処女膜を突き破って、充留君のモノが私の膣内に侵入してくる。 「・・・ぁ、ぃ・・・た・・・・んぅ・・・・・」 私は激痛に耐えながら、愛しの彼のモノを受け入れていく。 ブチ、プチッ、プツン・・・と少しづつ、私の処女の証が消えていき・・・・やがて全て無くなった。 ニュルン・・・と一気に彼のモノが私の奥まで入る。 コツン、と子宮口に充留君の先端が当たる。 私の隠毛と充留君の隠毛が擦れてキモチいい。 「・・・全部、入ったよ・・・亜衣。僕ら・・・繋がった・・・・セックスしてるんだ」 「・・ハァハァ・・・うん、分かる・・よ・・・充留君の、私の膣の中で・・・・ビクビクしてる・・・・」
私と彼は初めてのセックスに感動していた。 彼は好きな女の膣内を自身のモノで埋めたことを、私は好きな男のモノで自身の膣内を埋められたことを・・・悦んだ。 カラダが震えて、その行為は素晴らしいコトなのだと教えてくれる。 「動くよ・・・亜衣」 「・・・うん」 時刻は夜中の一時を回っていた。 月の明かりが部屋を静かに照らしている。 ギシギシとベッドが軋み、部屋に私のオンナの喘ぎ声と、充留君のオトコの咆哮が響く。 「・・あぁぁっ、、みつ、る君、・・・キモチ、ぃいよぉ・・・・ソコ、もっと・・・突いてぇッ・・・・・」
「亜衣ッ・・・・亜衣・・・・く、ぁぁ・・・・」 パンパンッ、思いっきり突かれる。 彼から突き込まれるたびに私の子宮は潰されて、抜かれるたびに膣のヒダが彼のモノに絡まって・・・カリ首がゴリゴリと膣壁を擦り上げていく。 「・・・ぁぁっぁ・・・、、いぃ・・・セック、ス・・・・すき、、、しゅきぃ・・・・・」 頭がチカチカする。 充留君が腰を突きながらクリトリスを親指で擦る。 「・・・ひゃゥ!!・・・ぁ、、らめッ・・・お豆・・・突きながら、弄っちゃ・・・らめぇ、、なのぉぉ・・・・」 「亜衣・・・本当に、綺麗だ・・・・・」 グリグリともう片方の手で私の大きな乳輪を摘まんで擦った。 「・・・あぁァっ・・・・」 私はもう堪らなくなって、仰け反りながらパシャァァ・・・と潮を噴く。 「・・ぁ、ごめ・・・んなさ・・・・ベッド、汚し、ちゃ・・・んぅぅッ・・・・」 彼が上から覆いかぶさって私の唇を塞ぐ。 「・・・んぅ、チュ、、ちゅる・・・、チュパ、ン、、チュ・・レロォ・・・・ちゅッ・・♡」 私は充留君の舌に自分の舌を絡ませ合いながら・・・腰を浮かせる。 そして充留君は私が腰を浮かせるのに合わせて突き込む角度を変える。 最も奥深くまで突き込める位置を二人で見つけ出す。 「・・・ここだね、亜衣」 「・・うん・・・・そこから突いて・・・一番奥まで届くから・・・・」 一気に充留君がモノを引き抜いて、また一気に突いた。 奥の奥まで突かれて、私はもう、キモチ良すぎて・・・・ 「・・・ぁっぁ・・子宮、が・・・・潰れちゃ、ぅ・・・・・」 でも・・・好きなオトコに潰される事を私の子宮は・・・赤ちゃんの部屋は悦んでいた。 だって、キュンキュンと疼いてる。 充留君は激しく何度も何度も突いて抜いてを繰り返す。 「・・・亜衣・・・もう・・・僕・・・・イキ、そうだ・・・・・」 「・・う、ん・・・・いいよ・・・・キテ・・・・充留、くん・・・・・」 ビックンビックンと、さっきから彼のモノが震えて、もう我慢の限界なのだと分かっていた。 私の言葉を聞いて充留君は最後のスパートをかける。 「・・・ぁぁっぁ・・子宮、・・潰され、て・・・、また伸びて・・・すごぃ、よぉ・・・ぁっあァ・・・・」
「・・でるッ・・・出す・・・中に、膣内にッ・・・・」 ドクンッ、と彼のモノが私の膣内で跳ね踊った。 「・・・ッ!!、、ぁっ、ぁぁああぁァっぁアァぁぁッッ・・・・・」 ビュルビュル、と熱いナニかが彼の先端から放たれて私の子宮に注がれる。 それは充留君の子種なのだと理解すると、私の膣は左右からキュゥゥゥ・・・と締まった。 「・・・・・ああ・・・出てる・・・充留君の、いっぱい・・・・出てるよぉ・・・・・」 私は足をピンッ・・・と反らして彼に抱き着き・・・彼の白濁液の全てを子宮内に受け入れた。 これが私と充留君が初めてしたセックス。 その日から月曜日の朝まで私と充留君は共に過ごして、四六時中セックスをして・・・深く愛し合うのだった。
週明けの月曜日 私は充留君と付き合う事になったと和香ちゃんに報告した。 「そう・・・良かった。・・・・本当に良かったわ」 和香ちゃんはとても安堵している顔で私と充留君を見た。 充留君は・・・・花屋を復活させることに集中し過ぎて、それ以外の事がどうでもよくなってから愛想が悪くなった・・・というより、笑顔が無くなったと言っていた。 それを彼女はとても心配していたみたいだった。 「ミツル・・・ちゃんとまた笑えるようになったじゃない」 ・・・え?・・・・・今、充留君・・・笑ってる? 私はいつもの仏頂面にしか見えなかった。 ・・・・・なんだか悔しい。 これからもっと充留君と仲良くなって、いつか和香ちゃんでも分からないくらいの彼のささやかな変化でも分かるようになってやろうと密かに決心する。 「でも・・・まだ付き合ってるってあまり言わない方が良いわよ。なるべく隠してた方が良いかもね」 「え・・・どうして?」 私が聞くと和香ちゃんは目配せで、とある席を差す。 「あ・・・」 私は気が落ち込む。 そうだった・・・幼馴染の彼に、説明しないと。 この三日間も、彼からしつこくメッセージが届いていた。 勉強は捗っているか、とか、参考書のどこそこが難しいから気を付けろ、とか・・・どうでもいいメッセージを飛ばしてくる。 挙句の果てには電話まで掛けてきた。 丁度、晩御飯の後に充留君とリビングで立ちバックの体勢でセックスしていた最中だった。 無視しようかと思ったのだけど、しつこく鳴り続けるのでしぶしぶ対応したのだった。 もちろん体調が悪いからと、適当な理由を付けてすぐに通話を切って、充留君とのセックスを楽しんだ。 「・・・放課後はいつもみたいに別々に園芸部に行こうか?」 私の様子を気遣ってくれて充留君がそう提案してくる。 何か返事をする前に和香ちゃんが、 「うん、その方が良いと思うわよ。」 と言った。 放課後になった。 学校では充留君とは主にSNSのやり取りで会話をしていた。 『それじゃ、先に行くね』 『うん、私もすぐに行くから』 『あの・・・亜衣』 『・・・?なに?』 『部室に着いたら・・・朝の続きがしたい。すぐに』 ふふ、と思わず笑みが零れる。 充留君の方を向くと彼と目が合った。 彼は赤くなってすぐに目を逸らす。 『うん、いいよ。・・・いっぱい、シようね♡』 私がそうメッセージを送ると、充留君は立ち上がって教室から出て行った。 今朝、部室で彼が盛ってしまって・・・でも時間が無かったから私は充留君のおちんぽを咥えてフェラして抜いて上げたのだった。 でもそれだけで彼が満足するはずなくて・・・私も彼のモノをしゃぶりながらパンツを濡らしてしまっていた。 さすがにもう乾いているけど、二時間目くらいまではパンツに湿り気が残ったままでちょっと気持ち悪かったのだ。 充留君が教室から出て行って十分が経った。 私も教室から出る。 部室にある旧校舎に向かいながら想像してしまう。 (・・・あのベッドで・・・・これからセックスするんだ・・・) 学校で本番の性行為をする。 その背徳感に私は興奮していた。 それはきっと充留君も同じで・・・ (私って・・・こんな悪くてエッチな娘だったんだ・・・・) そんな風に思う。 園芸部の扉を開けて、足早に分室のドアの前に来て扉を開き、中に入る。 充留君が私の姿を見て寄ってくる。 そのまま私達は抱き合う。 「・・・・・・充留君・・・・私・・・えっち、シたい♡」 「うん。僕もヤりたい。亜衣のおっぱい触って揉んで・・・まんこに入れて中出ししたい」 「ふふ・・・もぉ、充留君ったら・・・♡」 私達はじゃれ合いながら着ている制服を脱いで全裸になって・・・・・・
Hシーンが見たい方はこちら(DLsite版) もしくはこちら(FANZA版) もしくはこちら(パスワード版) ※パスワード版を閲覧するにはパスワードが必要です。 この作品のパスワード→Ci-en(Patriot-Bard) ”あい言葉プラン”に入っていただく必要があります。 詳しい説明はこちら→パスワードの説明 冬休みが明けて新学期になった。 私達は相変わらず園芸部の活動をしながらセックス三昧の日々を送っていた。 そして二月の上旬ごろ・・・放課後に充留君と鉢植えへ水やりをしていた最中に・・・ 「・・・ぅ、・・・ん・・ぅぇ・・・・」 私は急な吐き気に襲われて、持っていたホースを放り出して近くにあった水飲み場へと駆け込んだ。 「・・ぉえ、、ぇぇぇえ・・・・」 お昼に食べた物を全てもどしてしまった。 「・・・亜衣ッ!?」 私の異変に気付いた充留君が慌てて駆け寄ってくる。 「・・ッ!!・・・落ち着いて・・・ゆっくり口の中のものを全部吐き出すんだ・・・慌てなくて良い。・・・飲み込んだら駄目だよ・・」 充留君が私の口の中に指を入れて吐き出すのを手伝ってくれた。 「・・み、つる君・・・手、汚れちゃう・・・から・・・」 「亜衣のなんだから汚くなんてないよ・・・ほら、全部出して・・・ゆっくり・・・」 私は再度、吐き気を催してまた吐いてしまう。 充留君が優しく背中を擦ってくれるので安心する。 とりあえず吐き気が治まり・・・私は、ハァハァと息をついて呼吸を整える。 「亜衣、こっち向いて」 充留君がタオルで汚れた口周りを拭いてくれた。 少し・・・落ち着く。 「大丈夫・・・?」 「うん・・・ありがとう、充留君」 私と充留君は見つめ合う。 二人とも、”もしかして・・・”という思いがあった。 その日、私達はドラックストアで妊娠検査薬を購入した。 そして検査の結果・・・・・私のお胎に新しい命が・・・充留君との間にデキた赤子が宿っていることが判明したのでした。 それは当然の結果だったのだと思う。 だって私達はセックスする時に避妊なんて一度もしたことが無かったから。 付き合い始めて二ヶ月・・・私は充留君の子を懐妊した。 すぐに私達は私と彼の両親に報告して、絶対に産むと宣言する。 両親たちは驚いて心配したけれど、私達が十八歳になったら籍を入れますと言うと・・・好きにしなさいと、それを許してくれた。 学校にも『両親からの許諾を得ている結婚を前提にしたお付き合いの末の懐妊です』と、説き伏せたので何らかの処分を下される事はなかった。 もう夫婦も同然なのだから同棲しようという話になって、私達は近所のアパートで一緒に暮らす事になった。 卒業後のフラワーショップ開業予定地が部屋のすぐ下のテナントだった。 大家さんが良い人で、私達が卒業するまで無料でそのテナント物件を抑えてくれる約束をしてくれた。 同棲するための収入は私の手作りの押し花が売れに売れて、それに伴って充留君の育てた花も飛ぶように売れ始めたので余裕だった。 テナントの間取りを見て、どういう配置とディスプレイで営業するか・・・販売する花は何にするか、お店専用通販サイトの開業をやるかどうかなど・・・経験者である充留君のお義父さんとお義母さんと相談しながら考える日々を送った。 そんなある日のこと、残っていた引っ越しの荷解きをしていると、ハラリと何かが荷物の間から落ちた。 私はそれを拾い上げる。 「・・・あ・・・・・」 それは幼馴染の男の子から誕生日に送られた高級品のしおりだった。 手製の押し花のしおりは幼稚だから代わりにそれを使えと贈られたモノだった。 「・・・・・・はぁ・・・」 私は嘆息する。 どうしようか、と思う。 捨ててしまっても良いのだけど、これは贈り物だ。 無下に扱うのも気が引けた。 だからと言って後生大事に持っておいても仕方がない。 だって使わないもの。 充留君にも気分の悪いコトをしてしまう。 他の男からの贈り物を大事に取ってるなんて知ったら良い顔はしないだろう。 幼馴染の彼とはもう全く関わり合いは無いし、携帯のメッセージもブロックして着信も拒否している。 新しい年度では私と充留君と和香ちゃんは進学クラスとは別棟にある就職クラスに編入する事になっているから、彼とは自然消滅するのが決まっているようなものだった。 ここの住所も彼は知らない。 教えるつもりもない。 ただ・・・ 「それでもやっぱり・・・ちゃんと話をした方が良いよね」 私は呟く。 何だかんだと言っても彼とは幼い頃からの知り合いで、一緒にずっと勉強してきたわけで・・・全く何の説明もなしに、さようならというのは感じが悪い気がした。 二月の終わり頃・・・学年末テストが一週間後に控えてるこの時期、部活動は原則禁止だった。 園芸部もそうだけど、水やりや肥料の入れ替えなど最低限度の事はしないと花が枯れてしまうので充留君がそれを手早く済ませて、それぞれ同棲中の部屋に帰宅という手筈になっていた。 本当は充留君と一緒に作業をやって一緒に帰りたいのだけど、幼馴染の男の子への対策で放課後はいまだに私と充留君は別々で行動していた。 もう良いんじゃないかと私は思うのだけど・・・和香ちゃんが、どうせ来年度になれば彼とは離れ離れになって、堂々と充留君とイチャコラ出来るんだから念のため最後まで彼には隠しておいた方が良い、と主張してその通りにしてる。 充留君が園芸部に行ったのを確認して、鞄に入ってある彼から貰った高級しおりを確認する。 今日、返すつもりだった。 そして脇に入れてあった充留君から初デートでプレゼントされたブレスレットを左手首につける。 校則違反なので見つかると没収されてしまうから学校では付けないようにしていた。 でも今は・・・勇気が欲しかった。 私は席から立って、幼馴染の彼に声を掛ける。 「・・あの、・・・ちょっと話があるから・・・その、・・・一緒に帰らない?」 彼は嬉しそうに私の誘いを受けた。 「・・・ほんと久しぶりに一緒に帰ってるよな」 「・・・・うん。そうだね。」 隣で歩く彼は・・・なんというか、どこか子供っぽかった。 将来はどうするの?、と聞かれて大学に行きますと漠然と答えるだけの子供。 充留君が・・・来年には父親になる私の婚約者がとてもしっかりしている人なんだと感じる。 「・・・・ちゃんと勉強はしてるか?大学受験までもうあと一年だぞ。」 「・・・・・」 「俺たち、一緒の大学に行くんだろ?」 「・・・・・・・・・」 私は目を逸らして手で髪先を弄る。 やっぱり・・・まだそんな事を言ってるのか・・・と呆れる。 嫌がってるって察してほしいのに、はっきりと言わないと分かって貰えないようだった。 仕方がないので意を決して私はちゃんと話をする事にする。 「・・あ、あのね・・・私ね・・・・・大学には、行かないと・・・思うの」 「・・・・・・なんでだ?」 彼が問い詰めてくる。 顔の眉間に皺がよって・・・あからさまに不機嫌な様相になった。 「なんでだよッ!?」 彼が怒鳴ってきた。 私は思わず委縮してしまう。 「・・・ッ・・ご、ごめんなさ・・・・でも、私・・・わ、たし・・・・」 そこまで言って、私は左手首にしてあるブレスレットを握った。 (充留君・・・私、頑張るから・・・・) これはきっと・・・私にとっての”壁”なんだと思った。 乗り越えないといけない。 充留君はもう立派な大人だった。 なら・・・私は? 充留君の隣に立つのだから、私だって”大人”にならないといけない。 ちゃんと・・・話すんだ。 私の意思を・・・子供の頃からずっと私を縛り続けて抑えつけてきたこの人に・・・あなたとは別の道を行きますって・・・ちゃんと言うんだ。 私は意を決して、顔を上げて彼に言う。 「私・・・高校を卒業したら、お花屋さん・・・フラワーショップをやろうと思ってるの」 彼が愕然と私の言葉を聞いている。 「今ね、その準備をしていて・・・・だから、もう・・・君と大学受験のための勉強は・・・しません。」 はっきりと拒絶の言葉を私は口にする。 ちょっとの間の後に・・・彼が口を開く。 「・・・そんなのは駄目だ。」 彼が苦渋の表情を浮かべて拒否の言葉を述べた。 私は・・・落胆する。 心のどこかで・・・この人にも応援してもらいたいと思っていた。 最後は離れる事になったけど・・・それでも小さい頃から一緒に過ごしてきたのだ。 笑顔で私の選んだ道を祝福して欲しかった・・・なのに、なのに・・・・ 「・・・・・なんで?」 私は悲しくなって理由を聞く。 彼は語気をさらに強めて言い放つ。 「花屋なんてやっても上手く行くはずない。」 「・・・・・・」 「大体、花なんて誰が買うんだよ。祝い事や行事でほんの少しの需要がある程度だろう?」 「そ、そんなこと・・・・」 そんなことは決して無い。 綺麗な花を育てたいと思ってる人はたくさんいる。 花屋から苗を買い付ける人だって、咲いた花を購入してガーデニングを嗜む人だって、生け花に使う人も・・・押し花をやる人だっている。 それを説明しようと口を開くけど、彼が畳み込むかのように言葉を続ける。 「そんな不安定でいつ破綻するかもしれないような商売に首を突っ込むな。」 「・・・・」 私は思わず黙ってしまう。 それは・・・・・・正論、だった。 充留君のご両親にも言われたことだ。 不安定でいつ破綻するかも分からない商売だ、それでもやるのかと・・・とても心配そうに私と充留君に話をした。 それは自分たちが痛い思いをしてきた上での言葉で・・・・とても重かった。 「お前は俺と一緒に大学に行くんだ。俺たちが目指している大学は二流三流の学校じゃない。卒業すれば一流の大企業への就職が約束されてるような国立大学だ。安定した将来が約束されてるようなもんだ。」 私は黙って俯く。 充留君のご両親に、”それでもやります”と言ったように・・・この人にも同じ言葉を言わないといけない。 でも彼はきっと・・・納得なんてしてくれない。 どうすれば良いのか、なんと言えば分かって貰えるのか分からない。 「花屋って・・・お前、そんな有っても無くてもどうでも良いような仕事に就いてどうするんだよ」 ・・・・・・・・・え・・・? 今、なんて・・・? 花屋なんて・・・・アッテモ、ナクテモ、ドウデモイイ、シゴト・・・・? 「花屋なんてくだらない商売だ。存在してる意味が無い。そんなものをわざわざやりたがるヤツってのは頭がおかしい人間だと思って良い。」 クダラナイ・・・・?・・・頭ガ、オカシイニンゲン・・・? 花屋をやってる人が?それをやろうとしている人が・・・・? 充留君の顔が浮かぶ。 一生懸命に花を育てて・・・綺麗に咲かせて、それをお客さんに売って、・・・最初は分かりづらかったけど、お客さんが喜んでくれた時に彼はほんのちょっとだけ笑うのだ。 その笑顔が・・・私は大好きだった。 花屋をやっていたお義父さんとお義母さんの顔が浮かぶ。 とても良い人たちだった。 親身になって私と充留君の相談に乗ってくれた。 私の押し花を買ってくれたお客さんたちの事を思った。 みんな花が大好きな人たちだった。 “花屋なんて存在している意味がない、そんなものをやってる人は頭がおかしい” ・・・・この人は、確かにそう言った。 その言葉は私だけでなくて・・・私の大好きな人たちの事も侮辱していた。 悔しい・・・悔しいッ・・・こんな事を言われてしまう自分が。 こんな事を言わせてしまうような・・・隙のある、弱い自分が。 私の好きなものを、好きな人達を・・・充留君を・・・・侮辱されて何も言い返せない自分が。 情けなくて・・・悔しくて、堪らない。 そう気づいた時・・・私の中で・・・何かがせり上がってきて・・・・・もう止まらなかった。 「お前は俺の言ってる通りにしてれば良いんだ。それで何もかも全部上手く行くんだ。だからまた俺と一緒に勉強して・・・」 「・・・・・・・しないでよ」 「・・・え?」 最初の声は震えて小声だった。でも・・・ 「馬鹿にしないでよッッ!!!!」 次に発せられたのは怒号だった。 彼があっけに取られた顔をしている。 「・・・・あなたに何が分かるの?・・・花のことなんて何も知らないくせにッ!!」 私は目の端に涙を浮かべて・・・強く目の前の男を睨んだ。 強い意志を持って、はっきりと言いたい事を言葉にする。 これが出来ないといけないんだ・・・私は。 それが出来るようにならないといけないんだ・・・・だって、私は充留君の隣に立つんだからッ!!彼とずっと・・・ずっと一緒に支え合うんだからッ!!! 「・・・君の言う通りだよ。新しいフラワーショップなんて上手く行かないことが大半だよ。有名店が需要を独占してるようなものだから、新規の店が続く事なんてほとんどない。でもッ・・・だからって・・・・やってみようって人の事を、その仕事に就いてる人たちの事をそんな風に見下してッ・・・・あなたは何様なのよッッ!!!」 目の前の男は・・・私の迫力に気圧されて、後ずさった。 「亜衣・・・お、落ち着け・・・・」 「・・・・ッ・・・」 私は彼から視線を外して再び俯いた。 (言わなきゃいけないことは、もうちゃんと言った・・・。あとはこの人がそれをどう考えるかって話だわ・・・・) そして、それはもう私には関係のないことだった。 この人がどんな考えでどう生きようと、もうどうでもいい。 私は黙って歩き出す。 幼馴染だった彼を置き去りにして。 「・・・ま、待てよ、亜衣・・・・待ってくれ・・・」 彼が慌てて私の後を追ってきた。 でも私はもう彼の事になど見向きもしなかった。 「お、俺が悪かった。・・・確かに特定の職業を指さしてあんな風にこき下ろす様な事は言うべきじゃなかった。・・・ごめん。」 「・・・・・・」 私は返事をしない。 する必要がない。 「あ、亜衣・・・・」 通学途中にある交差点に来た。 「私・・・こっちだから。」 「・・・え?」 私は充留君と同棲しているアパートのある道へと歩いて行く。 この人が歩く道とは別の道を。 「・・・そっちは別方向だろ。どこに行く気なんだよ」 私がどこに行くかなんて、なんでこの人に言わないといけないんだろう? どうして私がちゃんと答えてくれるって思うんだろう? もう無関係の人間なのに。 「・・・・君には関係ないと思う。」 私の冷たい一言に・・・完全な拒絶の言葉に彼は血の気が引いてるみたいだった。 そういえば・・・和香ちゃんが言ってた。 セックスを経験したら童貞かそうじゃないか男を見分けられるようになるって。 和香ちゃんはモテ女だから私と同い年なのに、何人かの男性とすでに経験があると言っていた。 というか私達の女子グループの中で処女なのは私だけだった。 だから和香ちゃんのその言葉が理解できなかったのは私だけだったんだけど・・・今、やっとそれが分かった。 確かに何となく目の前の男が童貞かどうか分かるような気がした。 ちょっと女から睨まれたくらいでオドオドしてキョドってる。 自尊心ばかり強くて謙虚さに欠けて落ち着きがない。 (・・・・・童貞臭い・・・・・・・・キモ。) 私は初めて男に”キモい”なんて感想を持った。 「さようなら。」 私は別れの言葉をキモ男に告げて歩き出した。 もしもしつこく追ってきたら鞄で殴って痴漢扱いでもしてやろうかと思ったけど、追ってくるような気概も持ち合わせてはいないみたいだった。 しばらく歩いて、途中の公園で鞄を開き、中からあのキモ男から貰ったしおりを取り出す。 もう触りたくないくらいにキモチが悪い。 私は手でグチャグチャにそれを丸めて文字通りの”ゴミ”にして、公園のゴミ箱に投げ捨てた。 最初からこうすれば良かったと嘆息して、私は充留君が・・・愛しの彼が待つ自宅へと歩を進めるのだった。 四月になった。 クラス編成の変更があって私と充留君と和香ちゃんは就職クラスに編入された。 私と充留君はともかく和香ちゃんまで進学クラスから異動すると聞いた時は驚いた。 理由を聞くと、 「んー・・・まぁ、なんというか・・・クラスはどこでも良くてさ・・アンタと充留のそばに居たかったのよ。」 との事だった。 なにはともあれ、これでもう幼馴染のキモ男とは縁が切れた。 もう私は実家で暮らしてはいないし、両親には絶対に彼に住所を教えないように言ってある。 携帯も着信拒否してSNSもブロックしている。 就職クラスと彼の進学クラスは別棟でかなり距離があるし、敢えて近づきでもしない限りはまず出会う事は無い。 私は長年に渡って私を縛り、抑え付けていたモノから解き放たれて心がとても軽くなった。 もう二度と彼と会う事は無いという安心感がそこにはあった。 でも・・・私がトイレから帰ってくると和香ちゃんが沈痛な面持ちで私を迎えた。 隣には充留君もいて、やはり深刻な顔で私を見ていた。 どうしたんだろう・・・?、と思っていると和香ちゃんが口を開いた。 「あのさ・・・亜衣。・・・アンアの幼馴染の男がさっきこの教室に来てさ・・・・放課後、校舎裏に来てほしいって・・・」 最初、私は和香ちゃんの言葉の意味を理解出来なかった・・・いや、したくなかっただけなんだと思う。 私はフラフラと倒れそうになる。 やっと・・・あんな煩わしい男から解放されたと思っていたのに・・・・・・一体、いつまで私は彼に囚われ続けなければいけないの・・・・? 「亜衣・・・大丈夫?」 充留君が心配そうに声を掛けてきた。 「うん・・平気・・・だから」 ・・・嘘だった。 本当は全然平気じゃない。 「別に無視しても良いと思う。」 充留君がきっぱりと言い切る。 私もそうしたい。でも・・・ 「絶対に駄目よ。」 和香ちゃんが真剣な顔で否定する。 「無視しても・・・余計に酷くなって、必ず次が来るわ。」 “次が来る”という言葉に私は怖気が走る。 「こういう時は、はっきり言った方が良いのよ」 「でも待ってくれ。それでもし亜衣に何かあったら・・・」 充留君が反論する。 私はお腹に手をやる。 今、私は妊娠している。 私に暴行が加えられるのは・・・最悪の場合、仕方がないにしても・・・お腹の赤ちゃんにだけは絶対に何かあってはいけない。 母親の私は強くそう思う。 「・・・・充留君、和香ちゃん・・・・私、行ってくる。」 「亜衣・・・」 充留君が心配そうな目で私を見る。 「このままだといけないと思うの。きっとあの人は私に文句が言いたいのだと思うから・・・ちゃんとそれを聞いて、私の事も話して・・・分かって貰うわ・・・」 私はそう決意する。 もう本当に・・・本当に終わらせたい。 「・・・・・・文句が言いたいんじゃなくて・・・告白なんじゃないの?」 「・・・え?」 私は和香ちゃんの思ってもみなかった言葉に驚く。 「いや、普通に考えて告ってくる流れじゃん」 「・・・そ、それはないと・・・思う」 「なんで?」 「だって・・・前に話した通り、私・・・彼に酷いコト言って別れたもの。約束していた大学進学も一方的に反故にしたし・・・・・嫌われたと思う」 それに加えて、私と充留君が付き合ってるというのは学校中で噂になってる。 我が校のお姫様がコミュ障の根暗陰キャと付き合い始めたとか何とか・・・ きっと彼の耳にも届いているはずで、こんな状況で告白なんて無いと思う。 「・・・・・・・」 和香ちゃんは何か言いたげに黙ってる。 「・・・僕もついていく。」 「充留君・・・」 充留君が私のお腹をさすってきて微笑む。 「僕は父親なんだから、ちゃんと守らないと」 私は嬉しくて泣きそうになった。 「私も行くわよ」 和香ちゃんが当然でしょ、と言うように宣言した。 「うん・・・二人ともありがとう」 こうして・・・私は放課後、幼馴染の彼が待っている校舎裏へと足を運ぶ事になった。 校舎の端から少しだけ顔を覗かせてみる。 ・・・・・幼馴染の彼がすでに居て、私を待っていた。 私は・・・足が震える。 「亜衣・・・やっぱり僕も彼の所までついていくよ」 充留君の言葉に私は首を振る。 「ううん。大丈夫・・・ちゃんと出来るから・・待ってて。」 彼を安心させるように微笑む。 「何かあったらすぐに私達が飛び出して行くからね」 和香ちゃんがもしもの時の事を話す。 きっと彼とは口論になると思う・・・でも私は負けるつもりはない。 何を言われても、私の進路は変わらない。 彼が文句を言ってきても全て突っぱねる。 固くそう決意する。 ただ・・・口での喧嘩に留まらず、もしも暴力沙汰になってしまったら・・・・女の私ではどうする事もできない。 万が一の事態に備えて、校舎の端で充留君と和香ちゃんが待機するという手筈になったのだった。 「それじゃ・・・行ってくるね・・・」 そして私は彼の元へと歩き出した。 彼が私に気づいて、私をじっと見つめてきた。 ・・・いつものように私の乳房と腰回りを舐め付けるみたいに見る。 昔は男の人なんだから仕方がないよね・・・なんて思っていたけど、今はもうひたすらにキモチ悪い。 私は彼の目の前で立ち止まる。 「・・・・何か、用・・・ですか?」 私は目を逸らしながら敬語で彼に聞く。 もうあなたとは”見ず知らずの他人”なんだって分かってもらうためだった。 (・・・何を言われても、動揺しない。毅然と言い返して・・・進路の変更なんて無理なんだって分かってもらう・・・・) 心の中で身構える。 でも・・・彼の口から出てきたのは進路の事ではなかった。 「亜衣・・・俺はずっとお前が好きだった。俺と付き合ってほしい。」 私はその言葉に、口を思わずポカン・・・と開けてしまう。 (・・・え・・・・・?いや、待って・・・・・わけが・・・分からない) 私に文句を言うために呼び出したんじゃないの? 約束していた進路を一方的に、何の相談もせずに勝手に変更した事を怒ってるんじゃないの? あんな事があって、きっと私を嫌いになったはずなのに・・・ 「あ、あの・・・・なんで、どうして・・・?」 私は理由を聞く。 「だって俺たち約束してたじゃないか。十八歳になったら俺から告白して、それで結婚するって」 「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 ・・・な・・なに、それ? ・・・意味が分からなかった。 (約束って・・・いったい、いつの・・・?それに・・・結婚・・・??) 「まさか・・・お前、忘れたのか・・・?」 彼が眉間に皺を寄せる。 「ご、ごめんなさい・・・覚えて、ないです。」 私は俯いて、怯える様に返事をする。 「私が・・・その約束を今でも覚えていて・・・・それで、私と・・・付き合えるって・・・・・思ってたの?・・・今まで・・・・ずっと・・・・・?」 そんな約束なんてした覚えがない。 彼が何を言っているのか分からな・・・・・・・いや、・・・そういえば・・・・・・昔・・・・ (・・・・・この人と一緒に見ていたアニメで、そういうシーンがあって・・・・) 私は・・・思い出した。 (そうだ・・・そのアニメの主人公の男の子がヒロインの女の子に言うセリフだ) それでそのアニメのごっこ遊びをやって・・・今のやり取りをした覚えがある。 でもそれはアニメのキャラクターに成りきってやっていた事で、実際に私達がそういう約束をしたわけじゃない。 (・・・それを”私達がした約束”って、勘違いしてる) いや・・・・・・違う。 (この人、自分に都合よく記憶を捻じ曲げて改ざんしてる・・・・!!) 主人公の男の子の名前を自分のものに、そしてヒロインの女の子の名前を私の”亜衣”という名前に置き換えて・・・彼はその出来事を記憶してるようだった。 彼は目を爛々と輝かせて頷き・・・私がそのアニメのヒロインみたいに頬を染めて自分の胸に飛び込んでくる事を期待していた。 私は・・・一歩後ずさる。 (この人・・・・私のことなんて見てないんだ。今ままでもずっと・・・私にそのアニメのヒロインを重ねてたんだ) そのヒロインの女の子は主人公の言う事を何でも聞いて、指示に従い・・・敵の魔王を倒して・・・・最終回で約束通り十八歳になった時に結婚した。 彼は私にそのアニメヒロインと同じようになることを望んでいた。 現実の女に空想の女性像を重ねて、自分に尽くす事を求めている。 (・・・・・キモチ悪い、キモチワルイ、キモチワルイ、キモチワルイ、キモチ悪いッ・・・!!!) 私はもうこの人が生理的に受け付けられなくなった。 無理だ。 絶対に無理。 「あの、・・・本当に、ごめんなさい。無理です。わ、私・・・いま、好きな人がいて・・・・その人とお付き合いしてるん・・・です。」 「・・・嘘だ。」 「う、嘘じゃありません。本当ですッ」 私は和香ちゃんの言葉を思い出す。 『こういう時は、はっきり言った方が良いのよ』 その通りだと思った。 曖昧にしてボカしたりしたら駄目だ。 この人はそれを自分に都合よく解釈して、まだチャンスはあると思い込む。 徹底的に拒絶して否定して、完全に望みが一切無いと思い知らせなければきっと止まらない。 彼が私の告げる真実を・・・現実を必死に否定しようと声をあげる。 「だ、誰だよ・・・誰と付き合ってるんだよッ!!」 「・・・クラスメイトの児島充留くん・・・です。」 もう隠す必要なんてない。 はっきりと私は充留君の名前を口にする。 彼は一瞬、誰の事か分からなかったみたいだけどすぐに思い出し、 「な・・・なんで、あんな奴と・・・・・」 と、明らかに充留君を卑下する口調でそう呟いた。 (・・この人は・・・・また・・・よく知りもしないくせに・・・ッ・・・・そんな風に人を見下してッ・・・!!) 「・・・人の彼氏の事を・・・・あんな奴なんて・・・言わないで・・・」 私は静かに落ち着いて話したけれど、怒りが滲み出てしまっていたのだと思う。 彼はビクッ、と足を竦ませ、 「・・・わ、悪かった。」 と、慌てて謝った。 それから恐る恐る私に聞いてくる。 「・・・・い、いつから・・・いつからそんな関係になったんだ・・」 「・・・去年の十二月の中旬くらいから・・・充留君とお付き合いを始めました。」 ずっとこの人に隠していたことを話す。 彼は青ざめて私の言葉を聞いていた。 きっと私がまだ処女だと思っていたに違いない。 本当に気持ち悪い。 「・・・・・・これから言う事は、まだ内緒にして貰えますか?」 私は呆然とする彼に畳みかける。 「私・・・妊娠してるんです。・・・充留君との子供です。」 自身の下腹部を手でなぞる。 自然と笑みが零れる。 私と充留君との間にできた・・・愛の結晶が子宮で今もすくすくと育っている。 「・・・出産予定日は今年の十二月上旬です。・・・学校と私の両親、充留君のお義父さんとお義母さんは知っています。でも、まだクラスのみんなには内緒なんです。」 目の前のキモ男が足をフラつかせていた。 よほどこの話がショックだったらしい。 (私が大人しい女の子だからって・・・セックスした事がないと思ってたのかしら?) むしろエッチが大好きで、同棲している彼と毎晩ヤリまくってるのに。 家でえっちして、部室でえっちして、ラブホでえっちして、たまに野外でえっちして・・・ (私が青姦とかフェラチオ大好きって知ったらどんな顔するんだろう・・・?絶対に話す事は無いケド。) 「もう少し経って・・・安定期に入ったらみんなにも報告するつもりです。それと充留君とは十八歳になったら籍を入れることになってます。彼は私の婚約者です。」 ・・・これで全て言い切った。 普通の人間ならもう諦めるしかないと悟るはずだ。 私はそれを彼にも期待するけど・・・ 「亜衣・・・お、俺と・・・・」 「・・・ッ!!」 この男はまだ諦めずに私に手を伸ばしてきた。 (・・・・もう・・・本当に嫌ッ・・!!) ここまで執着されて怖気が全身に走る。 怖い。おぞましい。気色が悪い。 私は目の前の男を、”仲の良かった幼馴染の男の子”だなんて思えなくなった。 こんな男と肩を並べて登下校したり、遊んだりしていた自分がどれだけ愚かだったのかと思う。 早く縁を切りたい。 「・・・・だからッ・・・・あなたなんかとお付き合いなんて出来ませんッ!!!」 私は一方的にまくし立てて完全に拒絶し、踵を返してその場から足早に去る。 向こうに振り返る瞬間に見た彼の顔は、現実を突きつけられて絶望に青ざめていた。 そしてそれが私が見た彼の・・・幼馴染だった男の子の最後の姿だった。 もう二度と・・・私は彼と会う事も話す事も無かった。 校舎の端で充留君と和香ちゃんが待ってくれていた。 私は充留君の腕の中に飛び込む。 充留君は震える私を優しく抱きしめてくれた。 「よく頑張った、亜衣」 彼が褒めてくれる。 「うん・・・怖かった。・・・怖い。」 まだあの男は私に付き纏ってきそうで恐ろしかった。 「もしもこれ以上しつこいようなら・・・学校と警察に相談しましょう」 震えてる私に和香ちゃんが提案してくる。 私は頷くので精一杯だった。 「さぁ、亜衣。教室に戻ろう。」 私は充留君に抱きかかえられながら教室へと向かう。 和香ちゃんを見ると・・・ 「・・・?・・和香ちゃん・・?」 何か・・・葛藤しているような顔をしていた。 でも・・・やがて頭を振って、 「何でも無いわ。・・・・戻りましょう」 と言い、私達と一緒に教室に戻った。 彼女は・・・私が拒絶したあの人の方を見なかった。 そして十年後・・・ 私と充留君が開業したフラワーショップ、”児島フラワーマーケット”は大盛況だった。 開業した頃は地元での小さな店舗でやっていたけれど、今は都心の一角にそこそこの大きさの店舗を構えていた。 注文が多くて二人では捌き切れなくなって、何人かの従業員を雇うまでになった。 営利のみに走るならもっと店舗を大きくする事も可能だったけれど、私達夫婦はそれはしなかった。 私は押し花を機械的に量産して売り出す事には抵抗があったし、主人も機械的な大量生産で花を育てるのには難色を示した。 なので飽くまで”そこそこ”レベルの花屋に留まっていた。 それでも収入的には充分過ぎるほどで、子だくさんの家庭を主人と私はしっかりと養えていた。 さらに加えてネットの動画サイトでお店を紹介したり、花の育て方をレクチャーしたりもしている。 これがとても評判がよく、再生数に応じて広告収入も入るのでますます実入りは多くなった。 動画を撮影するための専用の個室を用意して、今も収録をやっている。 「・・・・というワケで今回はこの辺までにしますね。次回の動画ではアリッサムの切り戻しを実践してみたいと思います。それではまた」 私は笑顔で手を振る。 「うん。いい感じで撮れたよ。」 主人の充留がそう言ってカメラの録画を止める。 「今回の動画もいっぱい見てくれたら嬉しいなぁ・・・」 私は呟く。 「あー・・・たぶん、たくさん見られるんじゃないかな」 主人が私の乳房に目をやる。 私は思わず手で乳房を隠す。 別に主人に見られるのが嫌で隠したわけではなくて・・・ 「・・・あはは・・・・・・出来れば・・・ちゃんと花の育て方のほうを見てくれると嬉しいんだけどねー・・・」 どうも動画を見る人の中には私の・・・その、おっぱいをとても注視する人が多いらしい。 「コメントに巨乳妊婦えっろwwって書いてる人が居たよ。」 「も、もぉ・・・あなたッ・・・」 今私は妊娠していて、乳房がさらに大きくなっていた。 それが殿方の性的興奮度を高めてしまってるみたいだった。 「亜衣・・・」 主人がカメラを置いて私に寄ってきて、私の頬を手でなぞる。 「・・あっ・・・・」 それは私達夫婦の間での『今からセックスしよう』という合図だった。 これをやられると、それだけで私のおまんこはヌレヌレ状態になってしまう。 もちろん私は主人の要望に応える。 「・・・ん、チュ・・・っぁ・・・・」 キスして服を脱いで、さっきまで撮影していた机の上に寝て股を開き、主人のおちんぽの挿入を待ちわびる。 「亜衣は撮影の後にこの部屋でセックスするのが好きだよね?」 「・・・それは言っちゃ、だめ・・・・」 私は青姦が大好きだったけれど、いつしかこれの方にハマっていた。 私のカラダ目当てに動画を見ている男の人は多い。 きっと今も私でオナニーしている男はいるはずで・・・それを考えると私は興奮してしまう。 「あなただって・・・撮影の後にこの部屋でヤるとザーメンの量が多いわよ?」 「うん。だって亜衣に触れられるのは僕だけなんだから・・・優越感が凄くて興奮するんだ」 「ふふ・・・もぉ、あなたったら・・・・・ン、ぁッ・・・・・」 主人が私の膣にモノをニュルン、と入れて、子宮口まで一気に突き込んだ。 「それじゃ・・・今日もたっぷりイカせて、膣内射精してあげるね」 「・・・はい、あなた♡・・・・・私のカラダでいっぱいキモチ良くなって、たくさん出してくださいね♡」
私と主人の愛し合う声を聞いている花たちが蘭々と咲き誇っていた。 それはまるで私と主人の人生を祝福しているかのような可憐な美しさだった。 私達は瑞々しく咲き誇る花に囲まれて深く愛し合い・・・いつまでもお互いを抱きしめるのでした。 ─ 了 ─

“if”・・・もしかしたら”true”かもしれないルート(中野 和香 編)

「・・・ん、ァぁッぁアぁッ、、らめぇ・・・イク、イッちゃう・・・・ぁぁっぁぁ・・・」 ゴッゴッ、と子宮を突かれてゴリゴリと弄られる。 私はこの感覚が堪らなく好きだった。 「オラッ・・・イクぞ、和香ッ・・・!!中にッ・・・膣内射精してやるからなッ・・・」 「・・・ッ!!、、じゅ・・純一、、・・・だ、駄目ッ・・・今日は・・・危ない、日・・・っああぁっぁッ!!!」 私の制止も聞かずに彼はピストンをさらに激しく加速させる。 もうすでに数えきれないくらい体を重ねてきた相手なので、これが射精する挙動であるとカラダが覚えていた。 キュウゥゥ・・・と私の意思とは無関係に膣が締まる。 妊娠する危険性があるのに、私の子宮はそれを望んでいるかのように下に降りてきて子宮口が彼のチンコの先端にブチュゥゥ・・とキスをする。 「・・出るッ・・・く、っぁああッ・・!!!」 ドクンッ、と彼のモノが膨らんで、ビュルルウルルルルルルルゥゥゥッ・・・・と熱い精液が子宮に流れ込んできた。 「・・・ん、ァあっぁっぁッァァァッァぁぁぁぁっァああっぁぁッッ!!」 腰が勝手に震えて全身に快感が走った。 「・・ぁ、出てる・・・危ない日なのにぃ・・・・赤ちゃん、デキちゃうよぉ・・・・・」 私は妊娠の心配をするけれども、私の膣は彼のイチモツを強く締め付ける。 「おぉ・・・和香、すっげぇ締まってるぞ。やっぱ妊娠リスクあるとオマエ・・・感じやすいんだな」 私の彼氏はそんな無責任な事を口走って、最後の一滴まで私の子宮に自身の子種を注ぎ込むのだった。 ここはラブホの一室。 私はヤリ終わった後にシャワーを浴びて脱ぎ散らかしている下着と制服を着る。 男の方はすでに服を着てタバコを吸っていた。 私はベッドに腰かけている彼の横に座る。 「なぁ・・・和香。」 「・・・・何?」 彼がフゥー・・・と、肺に貯まっていた煙を吐き出す。 「別れたい」 ・・・・・・・まぁ、何となくそんな話をされるのかなぁ、とは思っていた。 半月ほど前からどことなく素っ気無かったから。 「・・・なんで?」 でも私は一応、そう聞く。 これでも好き合って交際して・・・カラダの関係を結んだ相手なのだ。 ちゃんと理由が知りたい。 「・・・他に好きな女が出来たんだ」 ・・・・・・・それもまぁ、分かってたよ。・・・確証が無くても雰囲気で分かっちゃうんだよね。 「・・・・私、危険日に中出しされたんだけど・・・?妊娠するかもよ?」 そう言って私が脅すと男は気まずそうに、 「ま、まぁ・・・その、なんだ・・・・そういうコトもあるって事でさ・・・・・・・な?」 などと言う。 ・・・デキたら堕ろせという意味だ。 「・・・・あっそ。・・・・それじゃ、これっきりって事で。」 「ああ・・・」 私はベッドから立って部屋から出ていく。 学校の帰りに直接ラブホに入ったから鞄もそのままだった。 エレベーターで一階に降りてそのまま出口に向かい・・・何事も無かったかのように帰路につく。 すれ違う人たちは、高校生の制服を着ている私がついさっきまでラブホで男とセックスしてたなんて思わないだろう。
子宮にはタプタプと別れた男の子種が溜まっていた。 帰ったら速攻でアフターピルを飲まなければならない。 「あー・・・・もうッ・・・!!」 と、悪態を吐く。 付き合っては別れてを繰り返して、これで三人目だった。 しかも全て相手の浮気が原因。 (未来を予知する力があるなら、浮気しない男の予知をさせなさいよッ・・・!!) 私は自身の特殊な力の不便さに辟易しながら、吹きすさぶ冷たい北風に身を凍えさせた。 季節は冬。 高校二年生の十二月始め。 中野和香(なかの のどか)、十七歳。 どうやら今年のクリスマスと年末年始は寂しく独り身で過ごさなければならないようだった。 「・・・・どこかに絶対に浮気しないオトコ・・・いないのかしら?」 空を見上げて呟いた独り言は、冬の重たい灰色の雲へと吸い込まれて消えた。 私には未来を知る事のできる力があった。 いわゆる予知夢というやつを私は子供の頃から見ていた。 ある日、幼馴染の男の子の家の花屋が経営破綻する夢とその男の子の未来の姿を見た。 小学一年生の頃の話だ。 なぜそれが予知夢だと分かるのかと聞かれると何とも答えづらいのだけど・・・普通の夢と違って、私にはそれが未来の在り方だとはっきり認識できるのである。 私はその暗い未来を回避しようと子供ながらに頑張った。 花屋の経営が傾いて大変だというのは予知夢以前に分かっていた事だったので、私と幼馴染のミツルは一生懸命に宣伝に協力した。 しかし・・・その未来は変えられなかった。 結局、花屋は潰れてそれが原因でミツルは笑わなくなった。 『大人になって僕がもう一度花屋をやるんだ』と、子供の夢とは思えないような悲壮感を纏わせ、花の育成の勉強に埋没するようになり、それ以外の事がおざなりになった。 特に他者とのコミュニケーションが壊滅的で私以外とはまともに話すら出来ないような人間になった。 いつも無口で愛想が全くない。 自分の世界に閉じこもって周囲の環境に興味を示さない。 誰かに話しかけられても反応しない事などがザラだった。 いわゆる根暗の陰キャ野郎になってしまった。 予知夢で見た光景と寸分違わない光景が目の前に広がり絶望したのを覚えている。 このように未来が見えても変えられない事がほとんどだった。 祖母が無くなる予知を見たが、見た通りの日付と時間に亡くなった。 近所のおじさんが脳卒中で倒れる予知を見て、そのおじさんに健康に気をつけるように注意喚起していたのだけど、結局倒れてそのまま半身不随の後遺症を患うことになった。 居眠り運転の乗用車が歩道に突っ込んで児童が跳ね飛ばされる予知を見た。 私は必死になってそれを回避しようと奮闘したけど、やっぱりどうにもならず子供が私の目の前で轢かれて跳ね飛び、壁にぶつかって亡くなった。 中学生のある時、親戚の叔父が会社からの帰宅途中に頭上から設置の甘い看板が落下して直撃し、死亡する予知を見た。 でももうその頃には、私はそれが回避できない運命なのだと悟って何もしなかった。 しかし、その死の運命は思わぬ形で回避される事になった。 私がその叔父の子供の甥っ子と河原で遊んでいた時に、私の不注意で甥が川に足を滑らせて落ちてしまったのだ。 私は慌てて川に飛び込んで甥を助けた。 命に別状は無かったものの、危うく大惨事に成りかけて、大事を取ってその日は病院に行く事になった。 叔父さんも会社から慌てて帰ってきて病院に駆け込んだ。 そしてそれが叔父さんの死の運命を変えたのだった。 予知夢の通りなら、叔父さんはもっと遅くに退社するはずだった。 その途中で事故に巻き込まれて死亡するというのが筋書きだったのに、自分の子供が川で偶発的に溺れてそれが遠因となり死なずに済んだのだった。 どうも”運命”というのは力ずくでは変える事はできないが・・・何か、こう・・・・不測の事態をタイミングよく発生させる事であっさりと変化する特性があるようだった。 でもそれは人間が意図して行うにはとても難しい所業であった。 そして中学三年生の頃、私は幼馴染のミツルについてまた予知夢を見た。 高校を卒業して花屋を経営し始めるのだけど、やはり上手く行かずに二年と持たずに潰れる。 その悲惨な状況と、失意の中でうな垂れる彼の姿が脳裏に焼き付いた。 さらにその頃、もう一つ予知夢を見た。 それは私がまだ出会ったことの無い女性の夢だった。 大学二年生のその女性が男からナイフでメッタ刺しにされて死亡し、その男も死んだ女に跨ってその場で自身の首を掻き切り死亡するという陰惨な予知夢だった。 その男女とは私が高校一年生の時に出会う事になった。 女の名前は大庭亜衣。男はその女の幼馴染だった。 高校一年の春、入学式当日。 無事に希望校に入学を果たした私はクラスメイトの中に予知夢で見た女性がいる事に気づいた。 夢の中では大学生になっていて、今の姿よりも大人びているが間違いなくその女性だった。 私はその子に話しかける。 「こんにちは。ねぇ、あなたどこの中学出身なの?」 「え・・・ぁ、東上岡中学・・です。」 私が問いかけると彼女はオドオドとしながら、出身校を答えた。 「へぇ・・・隣の学区なんだ。」 予知夢で知ってはいたけど・・・すっごい美人。 おっぱい、でっか。 私も大きい方だけど私より一回り・・・いや二回りくらいは大きい。 たぶんLカップの100cm越えは確実だと思う。 「あ、あの・・・あなたは・・・ぇ、っと・・・・・」 たぶん名前を聞きたいんだろうなと思い、私から答える。 「私は中野和香って言うの。あなたは?」 「わ、私は大庭亜衣って・・・言います。」 しどろもどろに答える彼女を見て、かなり内気な性格なんだなと思った。 「敬語じゃなくて良いよ。同級生なんだしさ・・・・ねぇ、亜衣って呼んでも良い?」 「え・・・あ、うん・・・いいですよ・・・・じゃなくて、いい・・・よ、・・・・和香ちゃん」 こんな感じで私たちはあっという間に仲良くなった。 どうも彼女とは性格的にウマが合うようだった。 しばらくの間、私達は他愛の無い話に花を咲かせた。 でも・・・ 「おい、亜衣。」 不躾に亜衣の名前を呼び捨てにする男子が、私の後ろから話掛けてきた。 (なによ、女子同士で楽しくおしゃべりしてるっての・・・に・・・・・・・ッ・・・!!?) 私は後ろの男を見て思わず悲鳴を上げそうになった。 「今日は帰った後、何か用事あるか?」 「ううん、何にも無いよ。」 「そうか・・・なら家で一緒に飯でも食おうぜ」 「うん、分かった。」 「じゃ、また後でな」 そう言って、私には目もくれずに自分の席に戻っていった。 その男とも同じ・・・クラス、だった。 「・・・和香ちゃん?どうしたの?」 私が青ざめている様子に気づいた亜衣が心配そうに声を掛けてくる。 「え、ぁ・・・うん、・・・な、何でもない・・・・・・・・・あのさ、」 「?・・・なに?」 「あの人・・・・今の、男・・・・男子って・・・・」 「あ、うん。彼はね、私の幼馴染なの。子供の頃からずっと一緒で、この高校にも彼と一緒に勉強したから成績の悪かった私でも入学できたんだよ」 朗らかに、彼は無害の人間です。むしろ自分にとって、とても有益な人ですと、亜衣はその男の事を私に紹介した。 私は・・・気持ち悪くて吐きそうだった。 だって、私は知ってる。 今から数年後・・・目の前で無邪気に笑うこの女の子が、あの男からナイフでメッタ刺しにされて殺される事を。 予知夢で痴情のもつれで刺されるのだろうなとは予測していた。 けれど、その相手はてっきり大学生になってから知り合う誰かだと思っていた。 でも・・・違った。 よりにもよって子供の頃から仲の良かった男子に刺されて死ぬのだ・・・目の前にいる彼女は。 その口ぶりから彼をとても信頼している事がわかる。 だからこそ・・・私の見た未来の惨状が、より深刻で陰惨な状況なのだと分かった。 救われない・・・・あんまりだ。 こんな良い子が、そんな末路を辿って良いはずがない。 私は必ず亜衣を助ける・・・救ってみせると決意するのだった。 入学して数か月も経つ頃には・・・件の幼馴染君と亜衣の関係性の異常さが垣間見えるようになった。 とにかく、あの男は亜衣に固執する。 そして亜衣はそれがおかしな事だと思っていないのである。 あの容姿だから、亜衣は当然の如くモテまくった。 夏休み前までに一体、何人の男から告られたのだろう・・・? 亜衣に聞くと、 「えっと・・・たぶん、十人・・・くらい?」 と、告られた数を把握していなかった。 おそらく誰が告ってきたかも覚えていないはずだ。 男からモテまくるという経験は私にもある。 私だけでなく、仲良くなったグループの女子たちはみんな容姿がそこそこ良い。 だから私も含めてみんなすでに、”そういうコト”は経験済みだった。 処女なのは亜衣だけだった。 そして、それがまずおかしかった。 この容姿であれだけ男から言い寄られて何で処女なのよ、と聞くと、 『幼馴染の彼が誰とも付き合うな、告白されても断れって言うから』と答えた。 私が『幼馴染君と付き合ってるの?』と聞くと、付き合ってるわけじゃないと答える。 『だったらそんなの無視すれば良いじゃない』と言うと、彼女は怯えた表情になって、『そんなこと・・・出来ない、よ・・・・』と、か細い声で呟くのである。 その洗脳・・・と言って良いのか分からないけど、その暗示はとても強力で、告白してきた男がどういう人なのかを吟味する様子など一切なく即座に振るのである。 まさしく、”命じられたからやった”の状態でそこに亜衣自身の意思は全く無かった。 放課後に一緒に遊ぼうという話になっても、亜衣は幼馴染君と一緒に帰らないといけないからと言って断るのである。 私達が、『何でアイツと一緒に帰ってるの?』と聞くと、『子供の頃からずっと一緒に帰ってるから』と、全く答えになってない答えを返す。 そしてそれが異常な事だと自分自身で気づいていない。 グループの女子の間で、”あの幼馴染君は様子のおかしい危ない人間である”、というのが共通認識になるのに時間は掛からなかった。 このような異常なモノを見せられ続けて、あの予知夢の未来が確実に来るだろうという思いが強くなった。 だってこんなの・・・いつか破綻するに決まってる。 亜衣が幼馴染君に恋愛感情を持っているならまだ救いはあるだろうけど・・・そういう様子は無い。 幼馴染君は亜衣にとって完全に恋愛対象外の人物だった。 (そりゃ・・・あんなコトになるわ・・・・) 私は予知夢を思い出して嘆息した。 さて、どうしようか・・・と思案する。 経験則から見ると、息巻いて未来を変えてやると躍起になったところで必ず失敗する。 むしろ回避しようと必死になればなるほど、予知夢の未来は現実化した。 私が予知夢の未来を回避できた経験は一度だけ。 叔父の死の回避だけである。 どうして回避できたのだろうか・・? (・・・・考えろ・・・絶対に何か法則のようなものがあるはず・・・) まず、あの頃の私は予知夢の回避を諦めていた。 けれど叔父と関わる事はやめなかった。 甥っ子と遊んでいたのも叔父に頼まれていたからだ。 それがなければ甥が川で溺れる事もなかったし、叔父が会社を早退して死の運命を回避する事もなかった。 次に私は必死になってはいなかったというのがある。 私はその頃、普通に学生をやっていて男と付き合ってセックスして遊んでた。 いつも通りに振舞っていたのである。 つまり、予知夢を変えるのに必要かもしれない条件は、 1、対象と関わる事をやめない 2、私自身がいつも通りの日常を過ごす この二つ。 その上で、突発的なイベントが発生して、その影響が間接的に働き、”運命”が変化する。 ・・・・・・これが正解かどうか分からないけれど、とりあえずこれでやってみるしかない。 ただ・・・私が変えたい運命はもう一つあった。 私の幼馴染の児島充留の運命だ。 ミツルの運命も何とかしてあげたいけど・・・どう考えても亜衣の事で手一杯だった。 彼の未来も悲惨と言えば悲惨だが、死ぬわけじゃない。 優先度はやはり亜衣の方が上だ。 私は亜衣を助けることに集中しようと決めたのだった。 それから一年が過ぎて私達は高校二年生になった。 幸いにクラス替えで私と亜衣、グループの女子たちと離れる事はなかった。 ・・・・亜衣の幼馴染の彼君とも。 亜衣を助けると決意したものの・・・具体的にやる事がない。 普通に私は学校生活を送っていた。 焦っても駄目なのだ。 叔父の時は死亡する当日に急激に運命が変わった。 その切っ掛けとなるイベントは狙いすまして起こしたわけではなかった。 努力してどうにかなる類のモノではない。 私が意識的にやれる事と言えば、対象となる人物・・・亜衣と関わり続ける事だけだった。 そして・・・彼女の運命を変える出来事がついに起こった。 昼休みに亜衣と談笑しながら食事していると、彼女が視線を中庭に向けていた。 私がどうかしたのかと尋ねると、 「あ・・・うん。中庭の花・・・綺麗だなぁって思って」 と答えた。 中庭の花・・・確かに綺麗に咲いている。 一年中、何かしらの花を入れ替えて常に花が咲き誇ってる状態をキープしている。 ・・・将来、花屋を営むための予行演習のつもりのなのだろう。 「あー・・確かにね。アイツいつも頑張って手入れしてるもんね」 ミツルが花の手入れを怠らずに世話をするのは小学生の時から変わらない。 雨の日のも風の日も、ただひたすらに花の世話をしていた。 まるで・・・心に空いた傷穴を埋めるかのように。 亜衣が食事の手を止めて、 「和香ちゃん、あの花を育ててる人知ってるの?」 と聞いてきた。 どうやら私がそれを知っている事に驚いているみたいだった。 「え?あ、うん。私の幼馴染だよ。園芸部の。」 「どこのクラスの人なの?」 「ウチのクラスだよ」 「えっ!?・・・だ、誰ッ!?」 亜衣が身を乗り出して聞いてくる。 彼女がこんなに積極的になることなんて珍しいので、ちょっと驚く。 「アイツだよ」 私はその人物を指さす。 教室の一番後ろの端。廊下側。 そいつはもそもそと菓子パンを食べていた。 「えっと・・・児島・・・君?」 亜衣はミツルの苗字を辛うじて思い出して口にした。 無理もない。 クラスの中に居るのか居ないのかも分からない程に影が薄いから。 「うん。児島充留。・・・無口で不愛想なんだけど根は良い奴だよ。」 亜衣を見るとソワソワと何かを言いたげにミツルの方を見ていた。 「おーい、ミツルー。亜衣がアンタに話があるってー」 きっと自分から男に声を掛けるなんてこの子には無理だろうから私が呼んであげた。 「ちょ、ちょっと和香ちゃんッ!?」 亜衣が慌てて私を止めようとしたけど、声はもうすでにミツルに届いている。 ミツルはゆっくりとこちらを向いて・・・・すぐに視線を菓子パンに戻し、また食べ始めた。 「・・・・・・」 「・・・・はぁ・・」 亜衣は無視されて唖然とし、私は頭を抱えて溜息を吐く。 「ごめんねー・・・アイツ昔からあんなでさー」 「う・・・うん。」 私はもう一度、大声で呼ぶ。 「ミツルッ!!、こっち来て!」 ミツルは食べていたパンを飲み込んで、 「・・・・用事があるならそっちからこっちに来てよ」 と言った。 「アンタね・・・、学校随一の爆乳美少女、大庭亜衣がお呼びなのよ?男なら喜び勇んで馳せ参じなさいよッ!!」 「・・・ッ!!・・・・の、和香ちゃんッ!!!」 亜衣が赤面して私を止めようとする。 みんな知ってる事実なんだし、恥ずかしがる事ないと思うんだけど。 ミツルを見ると、 「・・・・知らないよ」 再びそっぽ向いてパンを齧って、パックの牛乳を飲み干した。 相も変わらずの不愛想っぷりだった。 「・・・ごめんねー、亜衣。ああいう奴でさー・・・。」 「う、ううん。気にしないで、和香ちゃん。」 話はこれで終わりだと思い、何の用があったのか亜衣に聞こうとすると・・・彼女は席を立ってミツルの元に歩いて行った。 「え?あ・・・亜衣?」 亜衣のこの行動に私は驚いた。 (あの子がここまで積極的に動くなんて・・・) 二人のやり取りを耳を澄まして聞く。 どうやら亜衣は趣味の押し花に使う花を分けて貰おうとしてるらしかった。 私は彼女が押し花で作ったしおりを見せてもらった事がある。 率直に言ってすごい代物だった。 普通に売っているものだと言われたら信じるレベルの完成度で、彼女の美的センスと技巧が非常に高い事を示していた。 二人は話をまとめて、亜衣が戻ってきた。 放課後に園芸部で花を切り分けてもらうという手筈のようだった。 私はそれに懸念を感じた。 亜衣の幼馴染の彼君の事だ。 亜衣が一緒に帰れないと伝えたらあの男はどんな反応をするんだろうか・・・? 「大丈夫なの?」 席に着いた亜衣に私は問いかける。 でも彼女は何の事か分からない様子だった。 「幼馴染の彼君だよ。今まで絶対に一緒に帰ってたじゃん」 私が指摘してあげると・・・ 「あ・・・」 そこでようやく亜衣は失念していた事に気づいたみたいだった。 「・・・まぁ、彼君と少し距離を置く良い機会なんじゃない?ちょっとあの人、異常だと思うし」 以前から忠告してあげようと思ってたことを私は口にする。 「え・・・?そ・・・そうかな?」 でもやはり亜衣はあの男が少しおかしいとは思ってはいないみたいだった。 「だってアンタ、わざわざ彼君と一緒に帰って・・・それからまたすぐに出かけて私らと合流して遊びに行くじゃん?アレ意味不明だよ。」 なのでさらに指摘してあげる。 すると彼女は俯いて何かを考え始めた。 ようやく自分たちの関係がどこか歪な様相をしている事に思い至ったみたいだった。 そして・・・結論を言うと、これが大庭亜衣の死の運命を変える切っ掛けになったのだった。 次の日、私が登校すると亜衣がすでに来ていた。 私を見ると彼女は目を輝かせて私に話しかけてきた。 園芸部に入部したと言って、さっそく今日の朝から活動を始めたらしい。 いきなりの展開に私は驚くけれど・・・ 「あのね、それでね・・・今度、私も専用の鉢植えで花を育てることになったの」 「へー、何の花を育てるの?」 彼女の楽しそうに話す様子を見ていると私も嬉しくなる。 とても楽しいひと時だった。 でも・・・予鈴が鳴る少し前に・・・・幼馴染の彼君が教室に入ってきて、亜衣に詰め寄ってきた。 「おい、亜衣。」 「あ、おはよう・・・」 亜衣は気まずく挨拶をする。 「何で先に学校に行ってるんだよ。ずっと家の前で待ってたんだぞ」 「ご、ごめんね・・でも、約束してるわけじゃなかったから・・・・」 「何度も携帯にメッセージ送ったんだぞ」 慌てて亜衣は携帯を確認した。 「・・・ご、ごめん。マナーモードにしてて、気づかなかったの。」 「今日の放課後は一緒に帰れるんだよな?」 彼女はおずおずと返事をする。 「あ、あのね・・・えっと、実はちょっと用事があって・・・・これからは一緒に登校したり下校したり・・・できないと思うの」 それを聞いて彼君は唖然としていたけど、次の瞬間には怒り顔になって怒鳴りつけてきた。 「な・・・何でだよッ・・・用事って何だよッ・・」 「・・ぁ、ぅ・・・・あの、その・・・ごめん。言えないの。」 「何で言えないんだ?何か後ろ暗い事でもしてるのか?」 彼が亜衣を問い詰めようとさらに言葉を強くする。 私はもういい加減にムカついて声をかけた。 「ハイハイ、そこまでー。アンタね、亜衣だって年頃の女の子なんだよ?男子に言えないことの一つや二つあるに決まってるでしょー?」 私が割って入ると、そこでようやく彼君が私を認識した。 (やっと私の方を見やがったよ、コイツ) 一年の時からだけどこの野郎は本当に亜衣以外の女子とまともに話さない。 相手にもしていないのである。 私の事など単なる”モブ女子A”くらいにしか思っていないのだろう。 「和香ちゃん・・・別に私、人に言えないようなことはしてなくって・・・その・・・・」 「大丈夫、私にまかせなって。・・・アンタね、大体、いっつも亜衣に引っ付きすぎなのよ。私たちが亜衣を放課後に遊びに誘ってもアンタと一緒に帰らないといけないからっていつも断ってるんだよ」 今まで誰も言わなかった事を彼君に聞かせる。 「本当は亜衣だって私らとカラオケ行ったり買い物したりしたいのにさ。」 彼君が”本当なのか?”と言いたげに亜衣を見た。 すっ・・・と、亜衣は彼君から目を逸らす。 「どうしても一緒に遊ぶときは、わざわざアンタと一緒に帰って、それからまた出かけて私達と合流して遊びに行くんだよ?」 それを聞いて彼君は唖然としていた。 「・・・和香ちゃん、・・もういいから・・・・」 亜衣が私を止める。 「・・・そうだったのか、亜衣」 「・・ぁ、ぅ・・・・・」 彼君に問われて、亜衣は俯いた。 「亜衣は内気な性格だってアンタも分かってるでしょ?ちゃんとそこの所をさ、考えてやりなよ」 「・・・・すまなかったな・・亜衣。俺、全然気が付かなくて・・・・」 「う・・ううん、いいんだよ。でも・・・その、これからは・・・一緒に登下校するのは・・・・ちょっと出来ないかも・・・・・」 「・・・そうか・・・・・わかったよ」 「うん、ごめんね。」 私はその展開に少し面食らう。 (あら・・・意外とあっさり引き下がった・・・?) もっと揉めるかもしれないと思っていたのだけど・・・・彼君が寂しそうに自分の席へと離れていく。 「・・・・・・・・・」 私は黙ってその様子を見ていた。 (・・・亜衣の事を想っていないわけでも、考えていないわけでもないのか・・・・・・) 予知夢での彼の様子を思い出す。 目を血走らせて鬼のような形相で涙を浮かべて・・・亜衣をメッタ刺しにする。 一体何があれば彼君はそんな風になってしまうのか・・・? ・・・きっと亜衣に男でも出来たのだろう。 それで彼君は気が狂ってしまうのだ。 亜衣のためにその陰惨な未来を回避しようと努めているけど・・・彼君のためにもそんな未来は阻止しなければと思うようになった。 その日の放課後、ミツルは亜衣を先に園芸部に行かせて私に話掛けてきた。 「ノドカ・・・あのさ、・・・・」 こいつから話しかけてくるなんて珍しい。 「・・・大庭さんの好きなものって・・・・何かある?」 「・・・・・・・・・は?」 私はその意外な言葉に驚く。 ミツルはどこか落ち着かない様子だった。 「・・・ひょっとして、アンタ・・・・・」 私がそれを察すると、 「・・・別に、何でもない」 と、ぶっきら棒に言い放った。 ニマニマと私は自分の顔がニヤけるのを止められなかった。 今まで花の育成にしか興味を示さなかったのに・・・亜衣の魅力に当てられたようだった。 「・・・近くで花の展覧会やってるじゃん?あの子、その広告見てたよ。」 「・・・・・わかった。」 そうとだけ言ってミツルは園芸部に向かった。 教室から出ていく際に、 「ノドカ・・・・・・いつも・・ありがとう。」 ミツルが礼を言った。 「・・・”いつも”・・か。」 どうやらアイツは昔から・・・家の花屋が潰れて心を塞ぎ込ませてしまった時から・・・私が気遣っているのを分かってくれてるみたいだった。 それから三日後の夜・・・ついにその時がやってきた。 私は夢を見た。 それは大人になったミツルと亜衣が花屋を営んでる夢だった。 “児島フラワーショップ”の看板を掲げて繁盛しているようで、夫婦になった二人は仲睦まじく仕事をしている。 子供も何人かいるみたいで賑やかで幸せな家庭を築いてるようだった。 ・・・・・私は自室で目を覚ます。 そして今見た夢が・・・予知夢であると悟る。 陰惨なあの未来が書き換わったのだ。 月曜日の朝、学校に来てしばらく待っていると、亜衣とミツルの二人が連れ立って私のところに来た。 並んでる二人の体の距離がとても近かった。 (・・・ヤることヤッたわね) 私は直感する。 「あのね・・・和香ちゃん、私・・・充留君とお付き合いする事になったの」 亜衣が私に報告してきた。 (うん、知ってる。付き合うどころかアンタ達、結婚して子供五人くらい作ってたわよ。) 私は内心でそう思うけど口には出さない。 それはまだ未来の話で楽しみに取っておいた方が良い。 「そう・・・良かった。・・・・本当に良かったわ」 私は安堵して二人を見る。 亜衣は死の運命を回避した。 それどころか、おまけにミツルの経営する花屋が潰れてしまうという未来も同時に防ぐ事ができた。 懸念していた事が一気に氷解して清々しい気分だった。 「ミツル・・・ちゃんとまた笑えるようになったじゃない」 普通の人には分からないかもしれないけど・・・確かに少しだけ微笑んで表情が柔らかくなっていた。 隣で亜衣が何とも言えないような顔をしていた。 どうやらミツルについて自分では分からない事を私が分かっているというのに思うところがあるらしい。 (フフ・・・この子でも嫉妬するのね) しかしあと数年も経てば、今度は逆に私でも分からない事を亜衣は分かるようになるだろう。 これでハッピーエンドとなれば良いのだけれど・・・まだ油断はできない。 「でも・・・まだ付き合ってるってあまり言わない方が良いわよ。なるべく隠してた方が良いかもね」 私は忠告する。 「え・・・どうして?」 疑問を口にする亜衣に、私は目配せでとある席を差す。 その席は亜衣の幼馴染君の席だった。 「あ・・・」 と、亜衣が気を落とす。 ・・・ちょっとした事で運命は変わってしまうのだ。 叔父の時もそうだったし、今回もそうだ。 何かの拍子であの陰惨な未来に逆戻り、などという事になったら目も当てられない。 「・・・放課後はいつもみたいに別々に園芸部に行こうか?」 亜衣の様子を気遣って、ミツルがそう提案する。 「うん、その方が良いと思うわよ。」 と、私は言うのだった。 それからは平和な日々だった。 亜衣とミツルは仲良く部活動と恋人をやっていたし、幼馴染君はそれに気づかず過ごしていた。 どうやら亜衣は完全に彼の事を拒絶したらしく、もう目も合わせないような関係になっていた。 もう大丈夫かなと思ってたところで・・・私はまた新しい予知夢を見た。 その夢は、ある男の歩む人生だった。 泣いてる。 暗い部屋で一人・・・泣いてる。 ずっとずっと、ずっと・・・・・涙を流す日々がひたすらに続き・・・中年になり、老人になり・・・・・独りきりで、孤独に死んだ。 死ぬ間際まで彼は想い人の名を口にして涙を流し、息絶えた。 それはまるで花の一つも咲かない・・・渇き枯れ果てた荒野で絶望と諦観の風を吹き付けられ、ポキリと折れてしまった枯れ木のような人生だった。 私は自室で目を覚ます。 すこぶる気分が悪い。 「・・・・・・・・・・・・・・・知らないわよ。」 ふざけるなと言いたい。 あんなに亜衣を苦しめておいて・・・自業自得だ。 あの男に幸せなんてもの、あって良いわけがない。 苦しみ抜いて死ねば良いんだ。 私はそう思う。 でも・・・耳にその男の泣き声と姿が、彼女の名を呼ぶ悲痛な叫びが・・・・いつまでも残るのだった。 四月になった。 新学年になり、私と亜衣とミツルは就職クラスに編入された。 私は別に就職でも進学でもどちらでも良かったのだけど、二人の事が気がかりで二人に合わせて就職クラスを希望したのだった。 件の幼馴染君は進学クラスだから、これでもう完全に亜衣との縁は切れただろう。 亜衣とミツルは同棲を始めて、十八歳になったら籍を入れるのだそうだ。 まだ学生なのにと思うが、まぁ・・・仕方のない事だった。 というのも・・・亜衣は妊娠していた。 まだクラスのみんなには内緒の話だったが、私にはこっそり教えてくれたのだった。 そんな安寧の日々が続いて安心していたのだけど、ある日・・・亜衣の幼馴染君がわざわざ別棟のここまでやってきた。 教室の入り口で誰かを探しているようだった。 誰を探しているのかは明白で、私はすぐさま彼に駆け寄った。 「・・・ちょっと、何か用なの?」 私は彼に話しかける。 亜衣は今トイレに行っていて席を外している。 あの子が帰ってくる前に追い返した方が良い。 「・・・亜衣・・・・大庭はいるか?」 「・・いないわよ」 すぐに戻ってくるとは言わない。 男は何かを思案して私に伝言を頼んだ。 話したい事があるから放課後に校舎裏に来てほしいという内容だった。 教室から離れていく彼を見ながら、 (・・・しつこいな・・・・もうッ・・!!) と、悪態をつく。 しばらくして亜衣が帰ってきた。 私は事のあらましをミツルと話している最中だった。 私達の様子を見て亜衣が怪訝な表情を浮かべた。 「あのさ・・・亜衣。・・・アンアの幼馴染の男がさっきこの教室に来てさ・・・・放課後、校舎裏に来てほしいって・・・」 私がそう告げると亜衣は顔を青ざめさせた。 「亜衣・・・大丈夫?」 ミツルが心配そうに声を掛けた。 「うん・・平気・・・だから」 亜衣はそう言うけれど・・・無理してるのが明白だった。 「別に無視しても良いと思う。」 ミツルがきっぱりと言い切る。 でも私はそれに対して即座に反対した。 「絶対に駄目よ。無視しても・・・余計に酷くなって必ず次が来るわ。・・・こういう時は、はっきり言った方が良いのよ」 「でも待ってくれ。それでもし亜衣に何かあったら・・・」 ミツルが反論してくる。 寡黙なコイツにしては珍しいけど・・・無理もない。 亜衣は妊娠していて、父親は自分なのだから。 「・・・・充留君、和香ちゃん・・・・私、行ってくる。」 私達が言い合っていると亜衣が口を開いた。 「亜衣・・・」 ミツルが心配そうな目で亜衣を見ていた。 「このままだといけないと思うの。きっとあの人は私に文句が言いたいのだと思うから・・・ちゃんとそれを聞いて、私の事も話して・・・分かって貰うわ・・・」 亜衣が決意の顔でそう言った。 (・・・・違うわよ、亜衣) あの男はアンタに文句が言いたいんじゃない。 私は予知夢を思い出す。 彼については二つの夢の中でその未来を見た。 そのどちらもが亜衣に固執するが故の末路だった。 「・・・・・・文句が言いたいんじゃなくて・・・告白なんじゃないの?」 「・・・え?」 亜衣は私の思ってもみなかった言葉に驚いたみたいだった。 「いや、普通に考えて告ってくる流れじゃん」 「・・・そ、それはないと・・・思う」 「なんで?」 「だって・・・前に話した通り、私・・・彼に酷いコト言って別れたもの。約束していた大学進学も一方的に反故にしたし・・・・・嫌われたと思う」 あの男が亜衣を嫌いになることなんて無い。 私はそれを知っている。 (老人になって死ぬまでアンタの名前を呼んで泣くのよ・・・嫌いになるわけないじゃない) 「・・・・・・・」 どうにかそれを伝えようと思うけど・・・伝えようがない。 「・・・僕もついていく。」 「充留君・・・」 ミツルが亜衣のお腹をさすって微笑む。 「僕は父親なんだから、ちゃんと守らないと」 その言葉に亜衣は泣きそうになっていた。 「私も行くわよ」 大丈夫だとは思うけど、私は以前の予知夢を思い出す。 あの男は亜衣をメッタ刺しにする可能性があるのだ。 「うん・・・二人ともありがとう」 こうして・・・私達は放課後、あの男が待っている校舎裏へと足を運ぶ事になった。 放課後になって、私達は校舎裏へと向かった。 すでに彼君は待っているみたいだった。 「それじゃ・・・行ってくるね・・・」 亜衣がそう言って彼の元へと歩いて行く。 私とミツルはいつでも飛び出せるように身構えていた。 しばらくの間、彼と亜衣が何かを言い合って・・・ 「・・・・だからッ・・・・あなたなんかとお付き合いなんて出来ませんッ!!!」 亜衣が大声でそう叫び、踵を返してこちらへ足早に帰ってきた。 ミツルが帰ってきた亜衣を抱きしめる。 「よく頑張った、亜衣」 「うん・・・怖かった。・・・怖い。」 ・・・本当に怖かったんだろう。 亜衣はまだ震えていた。 「もしもこれ以上しつこいようなら・・・学校と警察に相談しましょう」 私はそう結論づける。 もはや彼はストーキングの領域に足を突っ込んでる。 公的機関へ相談するのに十分な状況だった。 「さぁ、亜衣。教室に戻ろう。」 ミツルが亜衣を抱きかかえながら帰ろうとする。 私は・・・・・ (・・・関係ない。この状況も、これからあの男が歩む未来も・・・・全て彼の自業自得なんだ。だから・・・・予知夢でそれを見たって、私がどうこうする話じゃない・・・) そう自分に言い聞かせる。 (このまま亜衣とミツルと一緒に教室に戻ればいい。ただそれだけなんだ。) でも、その光景が・・・頭から離れない。 暗い部屋で亜衣の名を呼んで、返ってくるはずのない返事を待っている。 ずっと独りで泣き続け、誰も助けてくれず、孤独に死ぬ。 その悲惨な末路。 「・・・?・・和香ちゃん・・?」 亜衣が私を見て声を掛けてくる。 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああッ・・・もぉッ!!!) 私は頭をガシガシと掻いて男の様子を見る。 亜衣の立っている場所からは見えない・・・彼の姿を。 ・・・・・泣いていた。 ひたすらに泣きじゃくっていた。 それは・・・ただの失恋した男の子の姿だった。 私は亜衣とミツルを見る。 この二人はきっともう大丈夫だ。 私がついていなくても明るい未来へと二人で力を合わせて歩いて行けるはずだ。 「亜衣、ミツル・・・先に戻ってて。」 私がそう言うと、 「和香ちゃんは・・・?」 亜衣が心配そうに尋ねてきた。 「私はまだちょっとやることがあるから。・・・ミツル、亜衣をお願いね。」 「あ、あぁ・・・分かった。」 ミツルは困惑していたが亜衣を抱いて、 「帰ろう、亜衣」 教室へと向かおうとする。 「和香ちゃん・・・」 「大丈夫。私もすぐそっちに戻るから、心配しないで。」 そう言って、教室へと戻っていく二人を見送った。 「さて、と・・・・・」 二人が向こうの角に入って見えなくなったのを確認して、私は彼を見る。 相も変わらず泣いていた。 ・・・いつまでも、どこまでも・・・彼は泣き続けるのだ。 このままだと彼の心は永遠に晴れる事は無い。 私は意を決して彼の元に歩いて行く。 泣いている彼の前に立つ。 そこでようやく彼は私に気づいたようだった。 「・・・ゥ、っく・・・ヒック・・・・・・」 ・・・・まったく情けない。 「いつまで泣いてるのよ。」 「・・・君、は?」 「中野和香・・・去年まで一緒のクラスだったんだけど、覚えてないの?」 彼は涙を拭って、私を見る。 「・・・それは知ってるけど、なんでここに・・・」 「・・・・・なんか泣いてる男の子がいるなって思って。」 亜衣をずっと縛り続けて苦しめて・・・有り得た未来では彼女を惨殺する男。 「・・・フラれたんだ?」 「・・・・・・・・」 私の言葉に彼は黙って俯く。 コイツの異常性を思い出す。 亜衣に固執するその様子・・・どこまで行っても亜衣、亜衣、亜衣、亜衣・・・・・他の女になど見向きもしない。 一途と言えば聞こえは良いけど、はっきり言って気色悪い。 どうしたもんか・・・、と思案する。 予知夢の未来を回避するためには、私がその対象者と何らかの関係性を保っていなければならない。 彼と私は進学クラスと就職クラスで離れている。 ここで何事も無く別れたらきっともう接点はない。 でも、だからと言って・・・・と、思いついた解決策に自分自身で躊躇する。 すると彼はまたグズグズと泣き始めた。 (あぁ、もうッ・・・女々しいなぁッ!!!・・・亜衣、亜衣って・・・他に女が居ないわけじゃないでしょーが!!) 私は彼の手を取って引っ張っていく。 「・・・な、中野さん・・・ちょっと、どこに・・・・」 困惑する彼をグイグイ引っ張って、校外へと出る。 そのまま繁華街まで行き、その建物の中へと入る。 「・・・いや、待って・・・中野さん、ここは・・・・ちょっと駄目だって・・・・・」 あぁ、もう童貞臭いなぁ・・・と思いつつ、部屋を適当に選ぶ。 (今朝、お金降ろしといて良かったわ・・・) 出てきたカードキーを取って、彼を連れてその部屋に向かう。 部屋に入って備え付けてあるベットに座る。 隣をポンポン、と叩いて彼にそこへ座るように促す。 彼は素直に従って私の隣に座った。 「で?・・・何があったの?全部話しなさい。聞いてあげるから。」 私が彼にそう言うと、 「中野さん・・・だから、何で君が・・・・」 まだ困惑しているみたいで『何で?』と聞いてくる。 「通りすがりの正義の味方だとでも思えば良いわ。失恋したんでしょ?誰でも良いから話せば少しは楽になるわよ」 そう答えると彼は戸惑いながらも話し始めるのだった。 それから半刻ほどが過ぎて・・・ 「・・・・・・・そういうわけで俺は亜衣に・・・フラれたんだ」 「・・・・・」 彼は全てを話し終わった。 「あの、中野さん・・・?」 まいったなぁ・・・と思った。 (コイツ・・・本気で亜衣のこと好きだったんじゃん) 亜衣の幼いころの話・・・一緒に旅行に行って遊んだ話、運動会で亜衣が転んで怪我をしておぶって保健室まで連れて行った話、テレビの怪談を聞いて怖くて一緒に寝た話・・・・。 どれもこれもが温かな話だった。 単純に聞いていれば話の男の子と女の子は結ばれるのだろうなと思うだろう。 少なくとも男の子の方はそのつもりであったみたいだった。 ただ悲劇なのは女の子の方に全くそのつもりが無かったことだ。 十八歳になったら告白して付き合う手筈だったと言った。 もしもミツルがいなければそれはおそらく叶った。 でも亜衣がコイツを好きになって付き合うわけではないのだ。 子供の頃からの惰性・・・もしくは強迫観念で男女の仲になるのだ。 相も変わらず男だけが盛り上がってることに変わりはない。 肉体関係を結んでも亜衣の心は冷めたままだったろう。 当然そんなもの長く続くわけもなく・・・大学生活の途中で亜衣は本気で好きになる誰かと出会い・・・結ばれる。 そして、私が見たあの陰惨な予知夢の未来へと繋がっていくのだ。 「・・・話して少しはすっきりした?」 「え?・・・あ、あぁ・・・・」 全くすっきりしてない顔で頷く。 未練タラタラだが、十年以上の恋慕が打ち砕かれた直後なのだから仕方がないのかもしれない。 「そう・・・それじゃアレの方もスッキリしましょうか」 私は制服の上着を脱ぎ、リボンをほどいてシャツのボタンに手をかける。 「な、中野さんッ!?・・・ちょ、ちょっとッ!!?」 隣の彼はおかしなくらいに狼狽し始めた。 (・・・・・ほんと・・・童貞臭いなぁ・・・・) ここまできて何で慌てるのよ? ヤる気も無いのにラブホに入るワケないじゃん。 「セックスするわよ」 「な・・・何でッ!?」 ・・・それ以外にこの男と繋がりを保つ方法を思いつかなかったからだ。 コイツは亜衣以外の女には目もくれない。 フラれた後でもだ。 何年も何十年もずっと引きずるくらい亜衣がコイツの心を占めている。 電話番号を交換して健全なお付き合いから始めましょう、などとやっても関係はすぐに切れてしまうだろう。 なら取り合えず心の繋がりは横に置いておいて肉体関係を持ってしまえば良い。 予知夢で見たコイツは年中無休で一日中オナニーに耽っていた。 性欲を持て余しているのは確実だから分かりやすくセフレになればいいのだ。 幸いに私は処女のネンネってわけじゃない。 初体験なんて小学生の頃に済ませている。 今まで付き合った男の数は三人・・・だけど合コンとか、行きずりのナンパとか、援助交際でセックスしただけの男も結構いる。 セフレは作った事無かったけど・・・まぁ、たまにはこういうのも良いだろう。 私は背中に手を回してブラのホックを外す。 その瞬間に乳房がズシン・・と落ちる。 ブラを完全に取ると私のおっぱいは丸見えになった。 (うわぁ・・・ガン見してる・・・・・) 彼が生唾を飲み込んで・・・喉仏がゴクリ、と上下に動いた。 ・・・・私はそういうオトコの艶めかしい色気に弱い。 「ふふ・・・ねぇ、どう?私のおっぱい。亜衣ほどじゃないけど・・・結構デカイんだよ?」 あの娘は天然の色香でオトコを誘う。 でも私はオトコが悦ぶ仕草や挙動を知ってるから・・・それを駆使してオトコを堕とす。 体をくねらせて、小首を傾げて、乳房を寄せる。 男の視線が乳に釘付けになれば成功。 ただでさえおっぱいをガン見してた状態だったのに、彼はもう射貫かんとばかりに私の乳房を凝視していた。 (童貞ちょろ・・・w) こうなったらもうこっちのものだった。 「・・・ねぇ・・・・触って。」 乳房を・・・少し、本当に軽く震えるくらいにささやかに上向かせ・・・・・
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